第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 健康保険法 〔問 5〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 健康保険法 〔問 5〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説

健康保険法

〔問 5〕 健康保険法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

A 60日間の期間を定めて雇用される者が、その期間中に負傷し休業のまま引き続き60日を超えて使用関係が存在し、負傷の治癒後に労務に服することが見込まれるときは、61日目から被保険者の資格を取得する。

B 全国健康保険協会の被保険者で、出産育児一時金等の支給を受ける見込みがあり、かつ、その被扶養者である配偶者が妊娠4か月以上で、医療機関等に一時的な支払いが必要になった場合、被保険者は出産育児一時金等支給額の6割に相当する額を限度として出産費の貸付を受けることができる。

C 健康保険組合が開設する診療所は、当該組合の組合員である従業員に対して療養の給付を行うことができるが、全国健康保険協会の適用事業所の事業主がその従業員のために開設する診療所は、全国健康保険協会の認可を得なければ、療養の給付を行うことができない。

D 同一月内で健康保険組合から全国健康保険協会に移った被保険者の高額療養費は、それぞれの管掌者ごとに要件をみて対処する。

E 保険医療機関は、療養の給付の担当に関する帳簿及び書類その他の記録をその完結の日から3年間保存しなければならない。ただし、患者の診療録にあっては、その完結の日から5年間保存しなければならない。

皆様、こんにちは。今回の解説をはじめさせていただきます。

Aは「臨時に使用される者で、2月以内の期間を定めて使用される者は日雇特例被保険者となる場合を除き、被保険者となることができない」という健康保険法第3条1項2号ロについて問いかけてきている問題です。60日間という期間は2月以内ですので、この問題文の人は日雇特例被保険者として健康保険法の保険給付を受けます。実際には、はじめて日雇特例被保険者になった人は、さきほどの、〔問 4〕の特別療養費を利用して療養の給付をうけることになるのです。しかし、その60日の期間を超えた場合は、超えた日から一般の被保険者扱いになります。たとえば、35日の期間を定めて使用される者は、36日目から被保険者になります。43日の期間を定めた者は44日目からとなります。15日と期間を定めた者は、16日目から被保険者となります。つまり、2月以内で初めにここで終わりという期間を定めているのに、それを超えたならば、一般の労働者と同じ扱いにしてあげましょうという配慮が健康保険法ではあるという覚え方をすれば良いと思います。よってAは○(正答肢)となります。

Bは「保険者は、被保険者の療養のために必要な費用にかかる資金若しくは用具の貸付けその他の被保険者の療養若しくは療養環境の向上又は被保険者等の出産のために必要な費用に係る資金の貸付けその他の被保険者等の福祉の増進のために必要な事業を行うことができる。」という健康保険法第150条2項について問いかけてきている問題です。実際には、平成21年10月1日から平成23年3月31日までの出産に係る(家族)出産育児一時金は、保険者が直接医療機関等に対し支払うことになっています。平成23年3月31日以後についても厚生労働省のホームページの http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/shussan/ のURLにあるように、今現在も継続中です。 さて、今回の問題の貸付け制度は、出産育児一時金が医療機関に支払われるまでに、妊婦などが医療機関にお金を払う必要が出た場合に、出産育児一時金の範囲内(8割相当)で申請をした場合は事前に貸付けが行われます。その場合は、仮に出産育児一時金が39万円の予定の人が、事前に20万円の貸付けを利用した場合は、残りの19万円が直接保険者から医療機関に支払われます。被保険者は貸付けを利用した分の返納の必要はありません。それだけに、限度額が出産育児一時金の8割以内というように限られています。よってBは○(正答肢)となります。

Cは「療養の給付を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる病院若しくは診療所又は薬局のうち、自己の選定するものから受けるものとする。 ①厚生労働大臣の指定を受けた病院若しくは診療所(病床の全部又は一部を除いて指定を受けたときは、その除外された病床を除く。以下「保健医療機関」という。)又は薬局(以下「保険薬局」という。) ②特定の保険者が管掌する被保険者(日雇特例被保険者を含む。)に対して診療又は調剤を行う病院若しくは診療所又は薬局であって、当該保険者が指定したもの。 ③健康保険組合である保険者が開設する病院若しくは診療所又は薬局。」 という健康保険法第63条3項について問いかけてきている問題です。 ここで、今回の問題文は「保健医療機関として指定を受けた病院が、保険者を2,3に限定しその被保険者及び被扶養者のみを診療することはできない」という昭和32.9.2保険発123号の厚生労働省保険局保健課長名通知の内容について問いかけてきている問題です。もっと、わかりやすく解説すると、保健医療機関の保険者としては、健康保険組合(単一組合で、700人以上、総合組合で3000人以上の被保険者を使用する事業主が厚生労働大臣の認可を受けて設立することができる)という規模が大きい団体が作った医療機関であれば、その健康保険組合の組合員とその扶養家族だけを対象にしても十分に経営が成り立つだろうが、そこまでの規模にない事業主が作った医療機関であれば、十分に経営が成り立つかどうかわからないし、そもそも医療機関としての適格性も疑わしいものがある。つまり、厚生労働大臣のチェックをきちんと受けて下さいよ、というのが厚生労働大臣の指定となります。よってCは×(今回の〔問 5〕の解答)となります。

Dは「次に掲げる額(以下「一部負担金の額」という。)が著しく高額であるときは、その療養の給付又はその保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費、家族療養費若しくは家族訪問看護療養費の支給を受けた者に対し、高額療養費を支給する。 (1)療養の給付について支払われた一部負担金の額。 (2)療養(食事療養及び生活療養を除く。②において同じ。)に要した費用の額からその療養に要した費用につき保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費、家族療養費若しくは家族訪問看護療養費として支給される額に相当する額を控除した額。 (3)高額療養費の支給要件、支給額その他高額療養費の支給に関して必要な事項は、療養に必要な費用の負担の家計に与える影響及び療養に要した費用の額を考慮して、政令で定める。」という健康保険法第115条について問いかけてきている問題です。 そして今回の問題は「同一月内で全国健康保険協会健保から組合健保、あるいは共済健保に移った場合の高額療養費は、それぞれの管掌者ごとに要件をみる。」という昭和48.11.7庁保険発21号つまり、社会保険庁保険課長名通知第21号について問いかけてきている問題です。わかりやすくいえば、損します。たとえば、ある同じ人が今月の5日にA病院で50万円、10日にB病院で50万円、20日にC病院で50万円の一部負担金を支払ったとします。Aは全国健康保険協会、Bは健康保険組合、Cは共済組合の被保険者という条件で支払ったとします(現実的にはこのような人はいないと思いますが、説明のため・・)。同じ保険者の元では、一箇月以内は合算して150万円となり、80,100円+(1,500,000-267,000)×1%=92430円の高額療養費算定基準額となります。 よって1,500,000-92,430=1,407,570円が戻ってきます。 それに対して、A,B,Cという管掌者別に計算するならば、 Aで80100+(500,000-267,000)×1%=82,430円が高額療養費算定基準額となり、戻ってくるのは、500,000-82430円=417,570円です。 BとCも同様の額ですから、全部併せて戻ってくるのは、 417,570×3箇所分=1,252,710円が戻ってくることになります。 さきほどの一箇所でまとめた場合の1,407,570円-1,252,710=154,860円が損になります。以上は極めて簡単な例にしましたが、結論として複数の保険者となると、一箇所増えるごとに基礎部分の80100円分ずつは損すると考えた方が良いですね。 全国健康保険協会のホームページの http://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3170/sbb31709/1945-268 のURLに今回ご紹介した計算の元となる数字が紹介されています。 健康保険組合はサラリーマン、全国健康保険協会は自営業、共済組合は公務員の人達を主な対象とイメージしている医療保険の母体です。それぞれの間でのデータのやりとりは原則としてありません(個人情報保護法もあり、他の団体には個人データを漏らさないようになっている)。よって、Dは○(正答肢)となります。

Eは医療機関の書類の保存期間は3年間、個人カルテは5年間というように覚え込んで下さい。よってEは○(正答肢)となります。

結論として今回の〔問 5〕の解答は「C」となります。

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