第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 健康保険法 〔問 6〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 健康保険法 〔問 6〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説

健康保険法

〔問 6〕 健康保険法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

A 事業主が保険者等に届け出なければならない事項について、その事実があった日から5日以内に届け出なければならないのは、①新規適用事業所の届出、②被保険者の資格取得の届出、③育児休業等を終了した際の報酬月額の変更の届出などがある。

B 法人の理事、監事、取締役、代表社員等の法人役員は、事業主であり、法人に使用される者としての被保険者の資格はない。

C 保険医療機関または保険薬局の指定は、政令で定めるところにより、病院もしくは診療所または薬局の開設者の申請により厚生労働大臣が行うが、厚生労働大臣は、開設者または管理者が、健康保険法等の社会保険各法の社会保険料について、申請の前日までに滞納処分を受け、かつ、当該処分を受けた日から正当な理由なく6か月以上の期間にわたり、当該処分を受けた日以降に納期限の到来した社会保険料のすべてを引き続き滞納している者であるときは、指定をしないことができる。

D 保険料等を滞納する者があるときは、保険者等は、期限を指定して、これを督促しなければならない。ただし、法に基づいて、保険料を繰り上げて徴収するときは、督促の必要はない。督促をしようとするときは、保険者等は、納付義務者に対して、督促状を発しなければならない。この督促状により指定する期限は、督促状を発する日から起算して10日以上を経過した日でなければならない。

E 保険料等を徴収しまたはその還付を受ける権利及び保険給付を受ける権利は、3年を経過したときは時効によって消滅するが、保険料等の納入の告知または督促は、時効中断の効力がある。

皆様、こんにちは。今回の解説をはじめさせていただきます。

Aは「適用事業所の事業主は、被保険者の資格の取得及び喪失並びに報酬月額及び賞与額に関する事項を保険者等に届け出なければならない。」という健康保険法第48条について問いかけてきている問題です。事業主の届出については 次の通りです。 ①被保険者資格取得届と被保険者資格喪失届は5日以内 ②育児休業等取得申出書は休業開始時 ①②は日本年金機構又は健康保険組合のどちらかに事業主が届ける義務があります。

③被保険者氏名変更届は遅滞なく ④少年院等への入院の届出は5日以内 ⑤適用事業所該当届けと不該当届けは5日以内 ⑥事業主の氏名等変更届は5日以内

③④⑤⑥は厚生労働大臣又は健康保険組合のどちらかに事業主が届ける義務があります。

⑦報酬月額算定基礎届(定時決定の届出)は7月10日までに ⑧報酬月額変更届(随時改定の届出)は速やかに ⑨被保険者賞与支払届は5日以内

⑦⑧⑨は日本年金機構又は健康保険組合に事業主が届ける義務があります。

⑩代理人選任解任届はあらかじめ厚生労働大臣又は健康保険組合に事業主が届け出る義務があります。

以上の①~⑩の届出を覚えておけば健康保険法関係での社会保険労務士試験関係は大丈夫です。

とはいっても、これだけを覚えるのは大変ですね。

ですから、「健康保険法の届出は5日以内」と覚えておいて下さい。これで大丈夫です。例外だけ意味をしっかりとおさえましょう。

例外の解説 ②育児休業等取得申出書というものは、 http://uiss.jp/3syosiki/a-yakusyo/a018.pdf の通りの書式で届け出ますが、育児休業を取得するのは、たとえば、被保険者が出産した場合は、産前42日、産後56日の労務に服さなかった期間に毎日標準報酬日額の3分の2の「出産手当金」というお金をもらい終わった後で、子供の面倒を見るために3歳ぐらいまで仕事を休むという意思表示のあらわれです。つまり、出産後56日以降の話ですので、いつから、育児休業にはいるかは、被保険者も事業主もよくわかっているはずです(その前提として出産日と出産手当金というお金を被保険者がもらっている、それを事業主も知っているという前提があります)。だから、一般的な届出は急に働きはじめた、急に死亡事故などで、働かなくなったから、5日間まってちょうだい、というのとは、届出に対する時間的な余裕が違います。だから、育児休業取得申出書は、休業開始時までには、」「いつから休むから、私の代わりに働く人を事業主さん、あらかじめ見つけておいてね、という意味合いで育児休業開始時までに事前に事業主に届けられていることが前提としてあるから、事業主から日本年金機構又は健康保険組合に提出するのは休業開始時でも十分に間に合うはずだと覚えておいて下さい。なんせ、出産してから56日もの猶予期間があるわけですから。

③の被保険者氏名変更届は「遅滞なく」という者は、「結婚、離婚、養子、離縁」などで氏名が変更した場合は「すぐに届けてちょうだいよ」というニュアンスです。ただし、5日以内のようにはっきりとした期限はないので、遅れても罰則はありません。日本は「罪刑法定主義」という定義があるように、何か罰則をさだめる場合には、誰が見ても他に解釈のしようがない位はっきりと法律などに明文化していないと罰則を与えることは出来ません。よって、今回の「遅滞なく」と⑧にある「すみやかに」という表現はどちらも、「すぐに届けてちょうだいよ」というニュアンスです。ただし、それが事実があってから、3日後になろうが、5日後になろうが、7日後になろうが、罰則はありません。ただし、届出が遅くなったから、本人がなんらかの不利益を受けた場合も自己責任として片付けられてしまいます。

⑧の報酬月額変更届(随時改定の届出)も「速やかに」となってますが、ニュアンスとして「すぐに届けてちょうだいよ」とイメージして下さい。しかし、実社会でこの届出が遅れて、結局出されないままになると、将来もらう年金が減ってしまうなどの実害が本人に出てくるので、実際には、ある程度の日数以内に提出されることが多いようです。

⑨説明のため順番が前後しましたが、報酬月額算定基礎届(定時決定の届出)は4月、5月、6月が終わったあとで、この3ヶ月での平均の報酬月額がでてから、届けることになります。ですから、実務上の処理の日数を考えて最終的な数字を事業主が届け出るのは10日後という感覚で7月10日までと覚えておくと良いと思います。

最後に⑩の代理人選任解任届というものは、たとえばあなたが今勉強している社会保険労務士試験に合格すれば、将来的に社会保険労務士として登録することが可能です。 一例として、事業主が労働保険や社会保険関係の手続きを社会保険労務士に代わりにやってもらう場合に、この代理人選任解任届を届け出ることになります。ですから、実際に業務をやってもらう前に、「あらかじめ」○○さんに代理を頼むことになりました、と届け出るというイメージで覚えてもらうと良いと思います。 長々と解説しましたが、あなたのイメージしやすい方法で何回か頭の中で思い描くと覚えやすいのではないかと思います。よってAは育児休業等を終了し多彩の報酬月額の変更は随時改定ですので、「速やかに」となるので、×(誤答肢)となります。

Bは「健康保険法において、被保険者とは、適用事業所に使用される者、任意継続被保険者及び特例退職被保険者をいう。」という健康保険法3条1項について問いかけてきている問題です。そして、今回の問題文は「法人の理事、監事、取締役、代表社員、無限責任社員等のいわゆる代表者又は業務執行者で法人から労働の対償として報酬を受けている者は、法人に使用される者として被保険者の資格を取得する。」という昭和24.7.28保発74号について問いかけてきている問題です。保発というのは厚生労働省保険局長名通知という意味です。本当に、社会保険労務士試験の問題を作成している方々は、 http://sharosi-siken.or.jp/44siken-iin.pdf に公開されているとおり17人です。 問題作成に当たって、本当に過去の通達もたくさん考慮しているような気がしますね。 逆に言えば、過去の通達のとおりの問題を出せば、問題の作成ミスは無いわけですからね。ということは、過去問をどんどん解いていけば、過去の通達をどんどんおさえることができますね。過去問をどんどん解いていって下さいね。Bは過去の通知のそのままの内容を聞いていますね。つまり、労働の対償として報酬を受けているならば、被保険者の資格を取得しますね。よってBは×(誤答肢)となります。

Cは「保健医療機関又は保険薬局の指定は、政令で定めるところにより、病院若しくは診療所又は薬局の開設者の申請により行う。厚生労働大臣は、当該申請に係る病院若しくは診療所又は薬局の開設者又は管理者が、社会保険各法の定めるところにより納付義務を負う保険料、負担金又は掛金(国民健康保険税を含む。以下「社会保険料」という。)について、当該申請をした日の前日までに、これらの法律の規定に基づく滞納処分を受け、かつ、当該処分を受けた日から正当な理由なく3月以上の期間にわたり、当該処分を受けた日以降に納期限の到来した社会保険料のすべて(当該処分を受けた者が、当該処分に係る社会保険料の納付義務を負うことを定める法律によって納付義務を負う社会保険料に限る。)を引き続き滞納している者であるときは、その指定をしないことができる。」という健康保険法第65条1項,3項について問いかけてきている問題です。文中の6か月が3か月になれば、第65条のとおりですね。今回の第65条3項の内容は、とても「悪質」と考えられています。「滞納処分」を受けると言うことは、普通に納期限が来ても払わないので、督促状が来ても払わない、とうとう市町村から「強制処分」として赤紙(差し押さえの紙)を家具などに貼られても居直って払わない。という状態から3月たっても、一円もまだ払わない、という場合にだけ、今回の厚生労働大臣の指定をしないことが「できる」のであって、「指定をしてはいけない」ではないので、かなり甘い基準ですね。 よって、Cは×(誤答肢)となります。

Dは「①保険料その他健康保険法の規定による徴収金(以下「保険料等」という。)を滞納する者(以下「滞納者」という。)があるときは、保険者等は、期限を指定して、これを督促しなければならない。ただし、第172条の保険料の繰上徴収の規定により保険料を徴収するときは、この限りでない。②前項の規定によって督促をしようとするときは、保険者等は、納付義務者に対して、督促状を発する。③前項の督促状により指定する期限は、督促状を発する日から起算して10日以上を経過した日でなければならない。ただし、第172条の保険料の繰上徴収に該当する場合は、この限りでない。」という健康保険法第180条1項,2項,3項について問いかけてきている問題です。まさに法律そのままですね。よってDは○(今回の〔問 6〕の解答)となります。

Eは「①保険料を徴収し、又はその還付を受ける権利及び保険給付を受ける権利は、2年を経過したときは、時効によって消滅する。②保険料等納入の告知又は督促は、民法153条の規定にかかわらず、時効中断の効力を有する。」という健康保険法第193条について問いかけてきている問題です。この文中にある民法153条とは「催告は、6ヶ月以内に、裁判上の請求、支払い督促の申し立て、民事調停法若しくは家事審判法による調停の申し立て、破産手続き参加、再生手続き参加、差し押さえ、仮差し押さえ又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。」と書いてあります。つまり、何らかの法律にのっとった行為をしなければ、2年が過ぎると、保険料の徴収や還付が時効切れでできなくなりますよ、と言っているわけです。それを健康保険法第193条は、わかりやすいイメージとしては「そんな面倒なことをしなくても、支払ってよという手紙を送ったらそれでいいよ」と言っているわけです。時効の2年が来る前に手紙を1回送ったら時効は中断して、また最初から2年の時効期間ができますよ、と言っているわけです。これは権利者からすれば、かなりありがたい制度です。逆に「居直って払わない」とする立場からは、なかなか時効にならないから、仕方がないから払おうか、という気持ちを持たせる効果もあります。よってEは3年が2年になれば良いので、×(誤答肢)となります。

結論として今回の〔問 6〕の解答は「D」となります。

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