第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 厚生年金保険法 〔問 1〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 厚生年金保険法 〔問 1〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説

厚生年金保険法

〔問 1〕
厚生年金保険法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

A 厚生年金保険法による保険給付は、老齢厚生年金、障害厚生年金、障害手当金、遺族厚生年金、脱退一時金の5種類である。

B 報酬とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び3か月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。

C 賞与とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受けるすべてのもののうち、3か月を超える期間ごとに受けるものをいう。

D 「配偶者」、「夫」及び「妻」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。

E 保険給付を受ける権利は、その権利を有する者の請求に基づいて、厚生労働大臣が裁定する。

皆様、こんにちは。今回の解説をはじめさせていただきます。

厚生年金保険法は国民年金法と比較すると、択一問題に関しては難しいと感じる年が多いです。その理由としては、国民年金法の上乗せ給付、つまり応用問題という意味合いが強いからです。ですから、基礎年金である国民年金法をの問題演習をしっかり行い、基礎をしっかり固めた上で、厚生年金法の学習に入ることをおすすめします。厚生年金保険法と国民年金法のどちらから学習するかを迷っている人は、必ず国民年金法の過去問を研究することから始めて下さい。では、今年の本試験の解説を始めます。

Aは保険給付に関する問題です。保険給付とは、普段から保険料を納めている人が、①高齢になって働くことが出来ないから収入を得ることが出来ない(老齢厚生年金)②なんらかの事情で障害を持つ身体になったために働くことが出来ないから収入を得ることが出来ない(障害厚生年金)③自分を養ってくれている人が死んでしまったけれども、自分自身は小さな子供である、女性である、 障害がある、高齢である、などという理由で満足に働くことができないから収入を得ることが出来ない(遺族厚生年金)の3通りがあります。
具体的に解説すれば、65歳以上になって、働くことができないから受給(もらうということです)するのが老齢厚生年金です。障害を持って働くことができないから受給するのが障害厚生年金です。自分をやしなってくれている人が亡くなったから受給するのが遺族厚生年金です。
ここで、考えなければいけないのは、老齢厚生年金の65歳以上という条件は、国民の誰もが生まれてから65年経てば、等しく65歳になるので、平等です。しかし、障害を持ったために働くことができないという場合は、その障害の程度によって、働くどころか日常生活もままならないくらいの障害の程度で、生活補償の意味合いも兼ねているような重度の障害に対する障害厚生年金(1級と2級)にたいして、日常生活は自分自身で行うことが可能である程度の障害である障害厚生年金(3級→国民年金の障害基礎年金を受給できない)があります。また、軽作業その他の条件をつけるならば、働くことができる程度の障害の人は、今後の生活のためにまず最初にまとまったお金をわたすという趣旨の障害手当金(毎年120万円弱で、正確な金額は毎年のように変更しています)。の3種類に分類できます。ただし、障害厚生年金(1級.2級.3級)というくくりにすると、障害厚生年金と軽度の障害の人が受給する障害手当金の2種類となります。
最後に遺族厚生年金に関しては、主たる収入源の被保険者が亡くなったときに、残された家族の現在の状況により、受給できるか否かが判断されます。受給することが可能な遺族の範囲としてはハイシフソンソで覚えていますね(配偶者、子、父母、孫、祖父母の順に遺族厚生年金をもらう権利があります)。ここで、労働者災害補償保険法のハイシフソンソケイや国民年金法の妻子と間違えないようにして下さい。ですから、厚生年金保険法では遺族厚生年金の受給資格としては、兄弟姉妹は、最初から入っていないですよ。そういうわけで厚生年金保険法による保険給付は、老齢厚生年金、障害厚生年金、障害手当金、遺族厚生年金の4種類となります。応用バージョンとして法附則(厚生年金保険法附則)では、脱退一時金、脱退手当金、特例老齢年金及び特例遺族年金がありますので、この問題はそれで引っかけようとした問題になりますね。脱退と特例に関する考え方は、
Aは「厚生年金保険法による保険給付は、つぎのとおりとする。
(1)老齢厚生年金
(2)障害厚生年金及び障害手当金
(3)遺族厚生年金」という厚生年金保険法第32条について問いかけてきている問題ですから、「あれっ」もっと他にも「脱退一時金、脱退手当金、特例老齢年金及び特例遺族年金」というのがあったような気がする、と感じるあなたはとてもよく勉強していると思います。脱退一時金は昭和60年までの旧法時代のなごりですから、新法の厚生年金保険法ではありませんね。脱退手当金も外国籍の人対象の制度ですから、日本国内に生活する人を中心に考えている厚生年金保険法ではありませんね。特例老齢年金も特例遺族年金も旧共済年金との合算で20年以上で年金を特例として出してあげましょう、ということで厚生年金保険法の範疇(はんちゅう)ではありませんね。「脱退」と「特例」に関しては、「厚生年金保険法附則」という条文によって、あとから考えられてきたものです。ただし、今回のAの問題はむずかしかったと思いますよ。よってAは×(誤答肢)となります。

よってAは×(この〔問 1〕での解答)となります。

BとCは「①厚生年金保険法において報酬とは、賃金、給料、俸給(ほうきゅう、と読みます)、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び3月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。②厚生年金保険法において賞与とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受けるすべてのもののうち、3月を超える期間ごとに受けるものをいう。③報酬又は賞与の全部又は一部が、通貨以外のもので支払われる場合においては、その価額は、その地方の時価によって、厚生労働大臣が定める。」という厚生年金保険法第3条と第25条の内容について問いかけられている問題です。

基本的に厚生年金保険法の言葉の定義は健康保険法の言葉の定義とおおまかには同じであると考えておいたほうが良いです。実際にお役所などに届け出る用紙は、同じ用紙の2枚複写や3枚複写などで、上から健康保険法提出分、厚生年金保険法提出分、個人控え分などになっている書式も多いのです。おおきなくくりとしての社会保険は社会保険の中でだいたい同じような語句を使っていることが多いです。ただし、細かい点つまり標準報酬月額は健康保険法の47等級に対して、厚生年金保険法は30等級で金額も違っているなど、という違いが社会保険労務士試験の本試験でもよく出題されるポイントでもあります。よって、BとCはいずれも○(正答肢)となります。

Dは「事実婚」についての問題です。今の日本の法律では、「事実婚」という単語での定義はありません。なぜならば、日本の法律は「婚姻関係」を保護しようとしているからです。ただ、現実問題として何らかのトラブル(同居している相手が亡くなったなど)の時に、残された者を少しでも保護してあげようという目的で、あとから「事実上婚姻関係と同様の事情とある者を含むものとする」という配慮がされるようになりました。戦前の日本などでは、「家制度」のもとにありましたから、事実婚などの権利は一切みとめられていませんでした。戦後の近代日本の流れの中で、「事実婚」の社会的地位が認められてきたと考えるべきでしょう。よってDは○(正答肢)となります。

Eは「裁定」という言葉の意味がわかっていますか?という問題になります。年金関係で使う「裁定」という言葉は、「何かをもらう権利の事実確認」というように読みかえて下さい。65歳になった人が老齢年金をもらいたいと思えば、老齢厚生年金(老齢基礎年金を含む)の裁定請求をする、と言います。これは私が老齢年金をもらう権利があることを確かめて下さい、と申し出ることになります。そして、請求書を受け取ったお役所が「確かに、この人は、保険料納付要件(原則として国民年金の25年)も満たしているし、年齢も65歳に達しているから年金を給付してあげましょう。」と認めれば、厚生労働大臣の名前で老齢年金の給付を認めます。このことを「厚生労働大臣の裁定」と言います。
年金は請求しないともらえません。その理由は、65歳になってから老齢年金をもらうことができたとしても、人によっては、「まだ」まだ生活資金には余裕があるから70歳まで待って、約4割ほど年金額がアップした条件で老齢年金をもらいはじめようと考える人や、生活資金に余裕がないために65歳になる前に老齢年金をもらい始めようとする人などがいるために、全員が一律で65歳スタートではないのです。ですから、お役所としても、その人がもらいたいと言い出すまで待っているという姿勢をとっています。また、障害年金や遺族年金なども基本的にいつ年金をもらうほどの障害の状態になったかはお医者さんに診断してもらうまではわかりません。いつ、誰が亡くなったから、残りのハイシフソンソ(又は国民年金法の妻子)の誰が受給資格者になったかもいちいちお役所は知らないわけです。ですから、年金関係はもらいたいという人からの請求を待っているという形式を今現在はとっています。よってEは○(正答肢)となります。

結論として〔問 1〕の解答は「A」となります。

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