第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 厚生年金保険法 〔問 6〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 厚生年金保険法 〔問 6〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説

厚生年金保険法

〔問 6〕
厚生年金保険法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

A 昭和7年4月2日以降に生まれた高齢任意単独加入被保険者であった者で、平成14年4月1日に厚生年金保険の適用事業所以外の事業所に引き続き使用されるものは、翌日に厚生年金保険法第9条の規定による被保険者の資格を取得し、当該高齢任意単独加入被保険者資格を喪失する。

B 離婚時の分割請求により標準報酬が改定された第2号改定者について、当該改定を受けた標準賞与額は、当該第2号改定者がその後60歳台前半の在職老齢年金の受給権者となった場合においても、総報酬月額相当額の計算の対象とはならない。

C 老齢厚生年金の受給権者について、受給権を取得した当時、生計を維持していた子が19歳に達した後初めて障害等級1級または2級に該当する障害の状態になった場合には、当該子が20歳に達するまでの間、加給年金額が加算される。

D 政府は、厚生年金保険事業の財政の長期にわたる均衡を保つため、保険給付の額を調整することとし、当該調整期間の開始年度を政令により平成18年度と定めた。

E 厚生労働大臣は、保険給付に関する処分を行ったときは、5日以内に、文書でその内容を、請求権者または受給権者に通知しなければならない。

皆様、こんにちは。今回の解説をはじめさせていただきます。

Aは厚生年金保険法の大きな変更の歴史がからんでいるので、難しいですよ。本来、国民年金法による老齢基礎年金も、厚生年金保険法による老齢厚生年金も、保険料納付要件さえ充たしていれば、65歳からもらうことができますね。そして、国民年金法では20歳から60歳までが一般的な被保険者となる「第1号被保険者」という扱いでしたね。ただ、60歳から65歳までの5年間に収入がない場合の特例として繰り上げ支給として一箇月につき0.5%ずつ減額で早めに年金をもらうこともできるのでしたね。厚生年金保険法では、65歳から老齢厚生年金をもらうことができるということで、国民年金法より5年ほど年齢要件(年齢条件)が高い65歳まで被保険者といっていました。しかし、厚生年金保険法では、平成14年4月1日の改正により、厚生年金保険法の被保険者の年齢は65歳ではなく、70歳までということになったのです。ただし、国民年金法のように、20歳から60歳までは誰もが強制的に被保険者という扱いではなく、「報酬をもらって働いている人」というように「報酬をもらって働くことを希望する人」が被保険者という扱いですから、70歳まで働かなくても、65歳で働くことをやめたら、老齢基礎年金と老齢厚生年金の受給が65歳でスタートするので、平成14年4月1日の改定の時にも、日本国民としては、大きく騒がなかったのです。「これが消費税を上げます」という改正であれば「いやじゃ、いやじゃぁ~」と大騒ぎだったでしょうから・・・。そしてこの70歳まで被保険者になることがOKとするようになったのも、ずばり「国にお金がない」からです。少子高齢化にあわせて少しでも働く人から保険料をとろうとしているのです。今までは、65歳までの人から保険料をとっていたのが、保険料を普通にとることができるのが、もう5年間分、国の財政に有利に変えてしまったのです。ここで、社会保険労務士試験範囲の中でややこしいことが1つ増えました。それは「高齢任意単独加入被保険者」の取り扱いです。高齢任意単独加入被保険者という、とても長ったらしい名称の被保険者というものは、任意単独被保険者と言って、働いている事業所が5人未満の事業所で、強制加入ではない事業所だから、厚生年金保険法の適用がない事業所だから、国民年金法の第1号被保険者であったAさんが事業主に「おやかたぁ~、あっしも厚生年金保険法に入りたいですよ。他のB君には言わないから、あっしだけ厚生年金保険法に任意単独加入させてくださいよぅ~。あっしは、おやかたのおやじさんの代から、ここにおせわになって、おやかたの子供の時は、おやかたのお守り(おもり)もしてあげたじゃないですかぁ~。」と頼んで親方が「仕方がないなぁ。Aさんだけですよ。事業主が認めたら、Aさんは厚生年金保険法の被保険者、つまり第2号被保険者となって、保険料も半額は事業主の私が支払って、将来の年金額も、今までであれば、老齢基礎年金だけなのに、老齢厚生年金ももらえるようになるので、いいですねぇ。しかし、子供の時に面倒をみてもらったから仕方がないなぁ。」と認めてAさんが65歳以上の場合は、「高齢任意単独加入被保険者」といいます。ただし、平成14月4月1日に被保険者が70歳までと変更になったので、平成14年4月1日の日に高齢任意単独加入被保険者という人は、70歳以上の人だけになりました。ということは、65歳以上70歳未満の前日までならば、「高齢任意単独加入被保険者」と呼ばれるはずであった人々は、どうなるのでしょう。実は、70歳まで報酬をもらっていれば、被保険者という扱いになったので、高齢任意単独加入被保険者ではなくただの、「任意単独被保険者」になったのです。つまり、平成14年4月1日の時点で65歳以上70歳未満の人達です。平成14年4月1日は西暦2002年4月1日です。西暦2002年4月1日に65歳以上70歳未満の人達の誕生日は、65~70を引き算して西暦1932年4月2日~西暦1937年4月1日生まれの人達です。これを昭和に変換すると、たしか戦争が終わった昭和20年が1945年ですから、1932年はその13年前ですから、昭和7年ですね。つまり、1932年4月2日~1937年4月1日生まれというのは、昭和7年4月2日から昭和12年4月1日生まれということができます。この間に生まれた人達は、「高齢任意単独加入被保険者」ではなく「任意単独被保険者」という名称の被保険者になったのです。そして、一応ルール通りに平成14年津4月1日に「任意単独被保険者」の資格を取得したから、「高齢任意単独加入被保険者」の資格を喪失するという扱いになります。
よってAの文章は正しくは「翌日に」ではなく「同日に」、「厚生年金保険法第9条の規定による被保険者」ではなく「厚生年金保険法第10条1項の任意単独被保険者」という2箇所が間違っているということになります。文末の「当該高齢任意単独加入被保険者資格を喪失する」は正しいフレーズとなります。はっきりいって、このAの問題文をここまで考えて解くことができる受験生はなかなかいのいのではないかと思う位の超難問ですよ。よってAは×(誤答肢)となります。

Bは「在職老齢年金の仕組みを適用する際に用いる直近1年間の標準賞与額については、離婚分割前の標準賞与額を用いる。」という厚生年金保険法第78条の11について問いかけてきている問題です。ここで平成19年からスタートした離婚分割について解説します。スタートした当初は、熟年離婚を推進するのかぁ、という文句も出た法律ですが、今は粛々と離婚条件としてすすめられているようですね。
具体例として夫が結婚後の老齢厚生年金500万円、老齢基礎年金50万円、妻はずっと専業主婦だから、老齢厚生年金0万円、第3号被保険者としての老齢基礎年金40万円の夫婦があったとしましょう。平成25年3月31日に離婚をして離婚分割の請求を妻がしたとしましょう。
(1)まず特定期間(平成20年4月1日以降の夫婦であった期間)の元夫の老齢厚生年金の分が100万円であったとします。この分は容赦なく50%ずつ分けます。この場合の元夫は「特定被保険者」と呼ばれ、50万円分の老齢厚生年金、元妻は「被扶養配偶者」と呼ばれ、50万円の老齢厚生年金を新たにもらうことになります。
(2)残りの夫婦であった期間に400万円分の老齢厚生年金があることになりますね。これを「按分割合」といって、どうわけるかは元夫婦同士で協議(話し合い)で決めることになります。どうしても、協議がまとまらない場合は、家庭裁判所が決めることができる、とされています。仮に元夫が60%、元妻が40%の按分割合になったとしましょう。
元夫の取り分は400万円×60%=240万円、元妻の取り分は400万円×40%=160万円となります。今回の元夫のことを「第1号改定者」、今回の元妻のことを「第2号改定者」と呼びます。
(3)結論として今回の離婚分割により、元夫の老齢厚生年金は計290万円、元妻の老齢厚生年金は210万円、元夫の老齢基礎年金は50万円のまま、元妻の老齢基礎年金は40万円のまま、となります。
(4)今回のBの問題は、この後で、元妻が62歳ぐらいで働いたときに在職老齢年金の支給停止要件との関係を聞いてきています。
もし働いてもらう毎月の報酬が毎月20万円と仮定すれば、今回の(1)~(3)の流れの元妻の例では
210万円÷12月=175,000円が年金月額になります。
210万円の年金をもらう賞与額が300万円と計算されたとします(賞与に関しては過去1年分だから、実際にはもらっていなくても、離婚分割で急に年金がふえた分の賞与があったと推定される)。300万円÷12か月=25万円となります。

①現在の報酬月額20万(今働いている報酬月額)
②賞与1月分25万円(もらってなくても離婚分割で増えた分もらったとみなされる)
③離婚分割後の年金月額17.5万円

①~③の合計62.5万円となり、支給停止調整開始額の28万円を越えた分の半額である
62.5万円-28万円=34.5万円

34.5万円×2分の1=17.25万円が支給停止となる。

えっ、離婚分割で17.5万円年金が増えたけど、17.25万円支給停止になるなら意味ないやん。どうしたら、いいんやろぅ。そうか実際にもらっていない賞与1月分の25万円がないものとしたら、次のようになるね。
①現在の報酬月額20万円
②賞与1月分0円
③離婚分割後の年金月額17.5万円
37.5万円-28万円=9.5万円  9.5万円×2分の1=4.75万円
そうかぁ、毎月17.5万円増えて、支給停止が4.75万円かぁ、まあ仕方がないね。
しかし、賞与額を変えただけでこれだけ生活に余裕が出てくるのだね。
というのが、今回の厚生年金保険法第78条の11の趣旨となります。
よって、Bは○(今回の〔問 6〕の解答)となります。

Cは「老齢厚生年金の額は、受給権者がその権利を取得した当時、その者によって生計を維持していたその者の65歳未満の配偶者又は子(18歳に達する以後の3月31日までの間にある子及び20歳未満で障害等級の1級若しくは2級に該当する障害の状態にある子に限る。)があるときは、第43条(年金額)の規定にかかわらず。同条(年金額)に定める額に加給年金額を加算した額とする。」という厚生年金保険法第44条1項について問いかけてきている問題です。この厚生年金保険法第44条1項は被保険者が障害厚生年金の1級又は2級の受給権を取得したときに
(1)65歳未満の配偶者
(2)満18歳になって以後の最初の3月31日が過ぎていない子(障害児を除く)
というように、一定の条件の配偶者と子に一人につき、加給年金として227900円を加算してあげようというものです。
ここで、勘違いしている人が多いのですが、年齢要件の扱いです。まず、配偶者が65歳未満という年齢要件(年齢条件)65歳になれば、配偶者自身が老齢基礎年金をもにうことができる年齢だから(もちろん、報酬をもらって働いていた人は、老齢厚生年金ももらうます)、加給年金という扶養手当のようなものは、老齢年金をもらうことができない65歳までにしましょう、ということになります。そういう趣旨ですから、万が一にも、お金がないという国の方針で老齢厚生年金の受給開始が今の65歳から70歳まで引き上げられたとしたら、加給年金額の支給も今の「65歳未満の配偶者」から「70歳未満の配偶者」という要件に変わることが予想されますね。
次に、子供年齢ですが、今の日本では、高校卒業の年齢から「大人」という扱いをするのが、実務的です。もちろん、法律上は「20歳」で成年という扱いで、「飲酒権」「選挙権」などは、20歳未満の者には与えられていませんし、「婚姻の自由(親の同意が必要)」もありません。その反面20歳未満の者は、色々な意味で社会的責任を免れるというように、未成年者としての保護が手厚くなっています。ただ、働くということに関しては、簡単に理解するためのイメージ例としては工業高校や商業高校が昭和という時代には社会的にも大きく推進されていたように、高校を卒業したら「働く」ことも社会的には「大きな認識」ともなっています。そういう意味で、加給年金をもらえる子という年齢も高校卒業つまり、18歳になって以後最初の3月31日までという高校卒業までという年齢要件になっています。高校を卒業してから最初の4月から工業高校や商業高校を卒業した人は、働くという前提が一昔前は当たり前のような雰囲気でしたね。ただ、唯一障害をもっている子供だけは、障害等級1級や障害等級2級という重い障害を持った子供は、働けないどころか、自立した生活自体も、かなり困難であるという理由で、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」という日本国憲法第25条にもとづき、生活保障としての障害基礎年金や障害厚生年金を出すことにしています。障害基礎年金は国が20歳以上の障害等級1級や2級の人に平等に出す年金ですね。では、20歳未満の障害等級1級や2級の人に対しては、どのようになっているのでしょうか。実は、20歳未満の障害児の方には、各地方自治体(市区町村のことです)が、障害手当や障害福祉手当などど、市区町村により名称は違いますが、税金が0円となったり、補助金が出たりと、「生活保護」に似た制度としての補償が必ずあります。そういう背景を知った上で、今回の問題では、子に対しての加給年金としては、本当は18歳以後の最初の3月31日までで打ち切るのが筋だけれども、障害等級1級や2級という重い障害をもっているのならば、自立した生活を営むのも困難でしょう。そのために、20歳からの障害基礎年金をもらいはじめるまでのつなぎとして20歳になるまで加給年金額を継続してあげましょう、という趣旨です。ここが理解できていれば、なぜ20歳までかという年齢要件と20歳以降は加給年金が打ち切られるかかわりにその障害を持った子供自身への障害年金が支給されるようになるのだなぁ、という流れがよくわかるはずです。本当に年金というものは、よく考えられて作られたものです。但し、今は国はお金がないので、年金制度の存続について色々と試行錯誤を続けているところですね。今の国会も、小沢問題や中国漁船ビデオ問題だけでなく、そういう年金制度などの社会保障についての審議がもっとテレビの国会中継で目立つような努力をしてほしいものですね。ということで、今回のCの問題文は、「19歳に達した」ではなく「18歳に達した」となれば良かったですね。よってCは×(誤答肢)となります。

Dは「①政府は第2条の4第1項(財政の現況及び見通しの作成)の規定により財政の現況及び見通しを作成するに当たり、厚生年金保険事業の財政が、財政均衡期間の終了時に保険給付の支給に支障が生じないようにするために必要な積立金を保有しつつ当該財政均衡期間にわたってその均衡を保つことができないと見込まれる場合には、保険給付の額を調整するものとし、政令で、保険給付の額を調整する期間(以下「調整期間」という。)の開始年度を定めるものとする。
②財政の現況及び見通しにおいて、前項の調整を行う必要がなくなったと認められるときは、政令で、調整期間の終了年度を定めるものとする。
③政府は、調整期間において財政の現況及び見通しを作成するときは、調整期間の終了年度の見通しについても作成し、併せて、これを公表しなければならない。」という厚生年金保険法第34条について問いかけてきている問題です。
上の厚生年金保険法34条の中での「財政均衡期間」とは、5年ごとに計画を立てたときから100年という期間は、財政が均衡するつまり、計画作成から100年後にも1年分の年金支給額は確保されていなければいけない、としている期間のことです。私個人の見解をはっきり言わせてもらえば、計画を立ててから、100年後に生きている人などいません。つまり、こういう計画を立てる人は普通は40歳代や50歳代の人、あるいは60歳代の偉いさん達でしょう。そういう人達が計画をたててから、100年後に生きているかと言えば「無理」と私は答えます。つまり、「立てた計画の責任をとる人は100年後には存在しません。」5年ごとに計画を見直して新たにたてるので、たとえば、2010年にたてた計画は2110年に結果を検証します。次の2015年に立てた計画は、2115年に結果を検証します。2020年に立てた計画は2120年に結果を検証します・・・、と続くのですが、検証する人は、「いったい、だれだ、だれだ、だれだ~・・・白いつばさのガッチャマァン~。」というように、将来世代への責任の先送りですね。次に「調整」という言葉は、何か良い言葉のように聞こえますが、「減らす=減額する」という意味で「とっても、悪い言葉です」。もう一度上の厚生年金保険法第34条をよく見てください。「保険給付の額を調整する期間」とありますね。小学生にもわかる言い方をすると「あげるお金をへらし続けるんだよ」となります。少しでも難しい、あるいはきれいな響きの単語を使う場合は、たいてい国民に負担を強いるときなのです。そして、調整期間の開始年度は「平成17年」つまり西暦2005年からとなっています。終了年度の見込みはありません。私の個人的な見解では、年金制度自体を大幅に変えない限り、調整期間が終了することは永久にないでしょう。というよりも、2005年にスタートした財政均衡期間の最後の2105年には、私自身は「あっちの世界」から、今の日本を見守っているでしょうから、「ヒヒ曾孫がこまっているのぉ」と「あちらの世界」でまだ生きている人達のことを心配してつぶやいていることでしょう。よってDは「平成18年度」ではなく「平成17年度」であれば良かったのです。よってDは×(誤答肢)となります。

Eは公務員からの連絡期限についてわかっていますか?という問題です。一般的に公務員から民間人に連絡するときは、「速やかに」することとなっています。「速やかに」は特に期限は決められていませんが、できるだけ早くしなさいよ、という意味でしたね。遅れても罰則はありませんでした。また、公務員側から民間人側に催促するときは、原則として「督促状を発する日から10日以内を期限とする」でした。これは、民間人に連絡するだけではなく、何か要求するものですから、実際に通知が民間人に家に届いてから一週間は余裕があるようにという配慮があります。Eは「5日以内に」の部分が「速やかに」で有れば良かったのですね。よってEは×(誤答肢)となります。

結論として今回の〔問 6〕の解答は「B」となります。

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