第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 厚生年金保険法 〔問 9〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 厚生年金保険法 〔問 9〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説

厚生年金保険法

〔問 9〕
厚生年金基金(以下本問において「基金」という。)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

A 基金の加入員である期間を有する者が離婚等により特定被保険者の標準報酬の改定が行われた場合において、当該離婚等による被扶養配偶者に対する加入員であった期間に係る増額改定分については、当該老齢年金給付の支給に関する義務を負っている基金または企業年金連合会が被扶養配偶者に支給する。

B 基金の設立事業所に使用される高齢任意加入被保険者(その者に係る保険料の負担及び納付につき事業主の同意がある者に限る。)である加入員は、当該事業主の同意があった日またはその使用される事業所が設立事業所となった日のいずれか遅い日に加入員の資格を取得する。

C 基金は、年金給付等積立金の運用について、金融商品取引業者との投資一任契約の締結を行うことができる。この場合、金融商品取引法第2条第8項第12号ロに規定する投資判断の全部を一任することを内容とするものでなければならない。

D 直近3年間に終了した各事業年度の末日における年金給付等積立金の額が、責任準備金相当額に10分の9を乗じて得た額を下回るもの又は直近に終了した事業年度の末日における年金給付等積立金の額が、責任準備金相当額に10分の8を乗じて得た額を下回るものとして、厚生労働大臣の指定を受けた指定基金は、財政の健全化に関する計画を定めて厚生労働大臣の承認を受けなければならない。(一部改正)

E 当分の間、政府は、基金の事業年度の末日における責任準備金相当額が過去期間代行給付現価(基金が支給する老齢年金の代行給付について、将来予想される費用の現在価値)に2分の1を乗じて得た額を下回っている場合には、当該下回っている額に5分の1を乗じて得た額(ただし責任準備金相当額が過去期間代行給付現価の額に4分の1を乗じて得た額を下回っているときは、当該下回っている額)を当該基金の申請に基づいて翌事業年度に交付するものとする。

皆様、こんにちは。今回の解説をはじめさせていただきます。

Aは「老齢厚生年金の受給権者に基金が支給する老齢年金給付は、老齢厚生年金がその全額につき支給を停止されている場合を除いては、その支給を停止することができない。ただし、代行部分の額を超える不文については、その支給を停止してもよい。」という厚生年金保険法第133条について問いかけてきている問題です。つまり、3.23倍という目標はあっても、実際にはそんなことは無理だから、最初に契約した段階で、本来の額の20%増しになるよ、はい、それで結構です、というようなスタートで何年もはたらきはじめるのが老齢年金給付のパターンです。銀行にお金をあずけるのに、今の利率は○○%だから、100万円を20年間あずけたら、20年後には税金を差し引いて、△△円になります、というものと似ていますね。そうして契約したものが、「離婚分割」で急に計算の元になる標準報酬額や標準賞与額が増えたよラッキー、といわれても、基金はそんな予定はなかったのですから、支払うお金などは蓄えていないわけです。そもそも、離婚分割が平成19年4月1日、第3号分割が平成20年4月1日にはじまったばかりと、いう厚生年金基金という団体にとってはのまさに「えっ」という「寝耳に水」状態なのです。だから、元々の契約(予定)していた代行部分を越える額は基金は出さなくて良い(実際に出していたらすぐに基金はつぶれてしまいます。すると、まだ退職していない加入者も、すごく困ります。今までの掛金が全く無駄になるわけですから・・・。)。そういうことで、基金が出さない増えた部分は国が代行して出すと言うことになりました。よってAの基金が出すという文章は間違いです。Aは×(今回の〔問 9〕の解答)となります。

Bは基金の加入員についてわかっていますか?という問題になります。基金を作っている大企業に勤めている人は、原則として勤め始めた最初から「加入員」となります。これは健康保険法での健康保険組合を独自に持っている大企業に勤めるサラリーマンでも同じ事がいえますね。ただ、高齢任意加入被保険者に関しては、一度退職しているのですから、給料からの天引きもできないので、基金の加入員とはなりません。しかし、事業主が「しかたがないなぁ、払ってやるよ」という同意と働く事業所が厚生年金基金を持っているという2つの条件があれば、加入員となります。Bの問題文の「いずれか遅い日に」という聞き方は、「両方とも満たしたときに」という意味です。本当に法律というのは、普段の言葉とは違う聞き方をするからわかりにくいですね。素直に「両方満たしたときに」といえば良いのにねぇ。よってBは○(正答肢)となります。

Cは、はじめて社会保険労務士試験の勉強をはじめた受験生が知っていたらおかしい、というくらいの「厚生年金基金令30条3項と厚生年金基金令39条の5」について問いかけてきている問題です。私自身、7350円出して買った社会保険労務六法の597頁と599頁をみなければ、この条文をしりませんでした。正直な所、私自身、この問題の一問だけを平成22年の8月22日の本試験ではじめて見たときに、この問題だけで○か×かを判断せよ、といわれたら、ある程度頭の中で考えて最後は「勘」で答えると思います。今回の厚生年金保険法のなかで、1番の難問ではないかと思います。今回の問題が出題された平成22年8月22日の時点では派日本中どこの専門学校のテキストをさがしても、今回の問題の条文は出ていません。ただし、平成22年に出たので、平成23年用のテキストには、過去問として、各社のテキストには掲載されると思いますが、「社会保険労務士六法」をすみずみまで読んでいる受験生でないと、この問題の条文はしらないはずです。だから、このCは捨て問だと私個人は考えます。もし、この問題の正誤で社会保険労務士試験合格の基準を考えなければいけないのでしたら、補正(救済)が入っても良い位難問だと思います。つまり私の個人的な考えでは捨てて良いレベルの問題です。しかし、今回の〔問 9〕に関しては、Aがあきらかに×だとわかるので、マークシートの解答はできます。かし、このCの問題文だけはこの問題が出題された当時では「奇問(知っていたらおかしいレベルの重箱の隅をつつく問題)レベル」ではないかとも思っています。この文章を出した大学教授の先生は、「どういう思いでこの問題を出されたのだろう」と私は思ってしまいます。ですから、この問題は理論で考えて答えがでる問題ではありません。あくまでも、知っているかいないかだけの問題です。よって条文通りだという解説しかできませんが○(正答肢)となります。

Dは「年金給付等積立金の額が裁定積立基準額を著しく下回る基金であって、連続する3事業年度中の各事業年度の末日における年金給付等積立金の額が、責任準備金相当額に10分の9を乗じて得た額を下回っているものとして厚生労働大臣の指定を受けたもの(以下「指定基金」という)は、政令で定めるところにより、その財政の健全化に関する計画(以下「健全化計」という)を定め、厚生労働大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様である。」という厚生年金保険法第178条の2,1項について問いかけてきている問題です。この条文の「指定基金」とは、健康保険法第28条での「指定健康保険組合=各事業年度の末日に残ったお金がその事業年度に要したお金の12分の3を下回った健康保険組合」と全く同じ考え方です。指定健康保険組合は、具体例でいえば、平成22年の4月1日から平成23年3月31日までの一年間で、その大企業の健康保険組合が保険給付として出したお金が500万円であったとします。そして、平成23年3月31日がおわつた時点で残っているお金(次年度への準備金)が、500万円の12分の3以上つまり、500÷12×3=125万円なければ駄目なわけです。次の四半期つまり3ヶ月分の準備金もなければ、十分な保険給付はやっていけないと判断されるのです。貧乏な健康保険組合だから、もっと余裕のある財政にしなさいねと言われるのです。これが健康保険法第28条での健全化計画のイメージです。Dの指定基金も同じ考え方です。基金の場合は、責任準備金(基金が代行部分を支払うために積み立てておかなければいけないお金の額のことです)の9割もなければ、少々掛金が入ってきたとしても、次の年の退職者などに払うお金がないやろう、と判断されるのです。貧乏な経営が危ない基金と判断されるのです。これが指定基金のイメージです。くり返しますが、健康保険法での健康保険組合と厚生年金保険法での厚生年金基金とは似ています。どちらも大企業が、国には頼らないよ、うちはうちで勝手にやるよ、と作った法人(団体)のことです。これを理解しているだけでも、受験生にとって難解な「基金」というイメージが少しでも払拭(ふっしょく)されると思っています。よってDは○(正答肢)となります。

Eは「当分の間、政府は、基金の事業年度の末日における責任準備金相当額が過去期間代行給付現価の額に2分の1を乗じて得た額を下回っている場合には、原則として当該下回っている額に5分の1を乗じて得た額を、各事業年度ごとに交付するものとされている。」という厚生年金保険法附則第30条について問いかけてきている問題です。この条文は指定基金として健全化計画を出させて財政状態を改善させると同時に、本当にひどい基金に対して、足りないお金の20%を国が出してあげましょう、という趣旨です。来年もひどければ足りない額の20%、再来年もともらうことができます。そして、本当に改善の余地がない場合には、厚生労働大臣名で「お前達はもうダメじゃ」というだめ出しの「基金の解散命令」により強制的に解散させられます。よってEは○(正答肢)となります。

結論として今回の〔問 9〕の解答は「A」となります。

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