第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 厚生年金保険法 〔問 10〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 厚生年金保険法 〔問 10〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説

厚生年金保険法

〔問 10〕
遺族厚生年金に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

A 遺族厚生年金の遺族の順位において、配偶者と子は同順位であるが、配偶者が妻(国民年金法による遺族基礎年金の受給権を有する者に限る。以下同じ。)の場合には、妻に遺族厚生年金を支給する間、子(所在不明によりその支給が停止されている場合を除く。以下同じ。)の支給が停止され、配偶者が夫(国民年金法による遺族基礎年金の受給権を有する者に限る。以下同じ。)の場合には、子に遺族厚生年金を支給する間、夫の支給が停止される。

B 老齢厚生年金の受給資格期間を満たしていない被保険者が死亡した場合において、死亡した者の妻が遺族厚生年金の受給権を取得したときに、夫の死亡当時遺族基礎年金の支給を受けることができる子がいない場合は、当該妻が40歳に達するまでの間、遺族厚生年金の額に遺族基礎年金の額の4分の3に相当する額が加算される。

C 遺族厚生年金(その受給権者が65歳に達しているものに限る。)は、その受給権者が老齢厚生年金等のいずれかの受給権を有するときは、当該老齢厚生年金等の額の合計額から政令で定める額を控除した額に相当する部分の支給を停止する。

D 障害等級1級及び2級に該当する障害の状態にある障害厚生年金の受給権者が死亡したときは、遺族厚生年金の支給要件について、死亡した当該受給権者の国民年金の被保険者期間を問われることはない。

E 老齢厚生年金の受給権者が死亡したことにより当該死亡者の子または孫が遺族厚生年金の受給権者となった場合において、当該子または孫が障害等級の3級に該当する障害の状態にあるときであっても、18歳に達した日以後の最初の3月31日が終了したときに当該遺族厚生年金の受給権は消滅する。

皆様、こんにちは。今回の解説をはじめさせていただきます。

Aは「①子に対する遺族厚生年金は、妻が遺族厚生年金の受給権を有する期間、その支給を停止する。ただし、妻に対する遺族厚生年金が第38条の2第1項若しくは第2項(受給権者の申出による支給停止)、次項本文又次条の規定によりその支給を停止されている場合は、この限りでない。
②妻に対する遺族厚生年金は、当該被保険者又は被保険者であった者の死亡について、妻が国民年金法による遺族基礎年金の受給権を有しない場合であって子が当該遺族基礎年金の受給権を有するときは、その間、その支給を停止する。ただし、子に対する遺族厚生年金が次条の規定によりその支給を停止されている間は、この限りでない。
③夫に対する遺族厚生年金は、子が遺族厚生年金の受給権を有する期間、その支給を停止する。前項ただし書きの規定は、この場合に準用する。」という厚生年金保険法第66条1,2,3項について問いかけてきている問題です。
この条文は何を言っているのかといえば、遺族厚生年金をもらう可能性があるのは「ハイシフソンソ」で、順位としては配偶者と子はどちらも第1順位者でした。そして、労災保険法での遺族補償年金の場合は、「転給」という制度があり、順位の前の者が死んだら、後の順位の者に権利が移っていくという制度がありました。しかし、遺族厚生年金には「転給」はありません。理由としては、年金は、だれもがいずれはもらう権利が出てくるはずですが、労働者災害補償保険法の「遺族補償年金」は逆にもらうほうが珍しい権利なので、保護に値するというイメージでとらえてください。
「転給」がない遺族厚生年金なので、不具合がおきないように「親子内での支給停止」という制度で「転給」の代用としています。
具体的な例として父が死んで、妻と子が残されたとします。受給権がどちらかしかないのであれば良いのですが、両方に受給権があったとしたら、原則として「ハイシフソンソ」の順通りに「妻」がもらって子は支給停止という扱いになります。それ以外の「ハイシフソンソ」となる、死んだ夫の両親、死んだ夫の孫の受給権は消滅して二度と復活することはありません。では、なぜ、子の受給権は消滅しないのでしょうか。それは、妻が再婚しても良いようにするためです。妻が再婚すれば、労災法の遺族補償年金では子に転給して、困ったことはおきないのですが、遺族厚生年金で子の受給権も消滅させると、すごく困ります。わかりやすくいえば、妻が再婚したときには、妻の受給権は消滅します。それはそれで妻は新しい男と再婚したのだから良い、という言い方もできます。しかし、後に残った幼い子どもはどうなりますか?死んだ元夫の両親、つまり幼い子どもにとっては、祖父母がひきとったとしても、遺族厚生年金はもらうなくなるのではこまりますね。また、そういうことがあれば、若い妻であったとしても、再婚のチャンスを逃してしまいますね。よって、幼い子ども(高校卒業まであるいは障害1、2級の未成年者)が妻と暮らしているならば、子は遺族厚生年金の支給停止ですが、妻が別の新しい男などと再婚したら、妻は失権して、幼い子どもの支給停止が解除されて、幼い子どもが直接遺族厚生年金をもらって、育っていくという流れをつくっているのです。もし、子も受給権が消滅していたら、遺族厚生年金自体が消滅してしまいます。それでは、妻は新しいチャンスをつかみにくいですね。心情的に再婚しにくいですね。よく考えてください。妻も子も遺族厚生年金の受給権を持つパターンは子がまだ未成年で幼い、妻も比較的若いということが考えられます。親戚から妻の将来を考えた上での再婚をすすめられることも、あるかもしれません。その可能性のためにも子の支給停止という状態を遺族厚生年金では考え出したのです。
結局は妻と子のかたまりで考えると、振込先の名義が妻から子に換わっただけで、実質的には遺族厚生年金の支給は継続しているという「最良の結果」となります。次に母が死んで子と夫の2人共に受給権を持った時のことを考えます。「ハイシフソンソ」でいえば、夫のほうが受給権がありますが、よく考えてください。遺族厚生年金は遺族基礎年金をもらうことを前提として、その2階部分としてもらうのでしたね。遺族基礎年金をもらう可能性があるのは誰ですか。そうですね、「妻、子」の2人だけでしたね。ということは、夫と子が同時に受給権を有する場合には、特例として子がもらうようにします。子は基礎年金ももらえますからね。そして、子がもらうということは、未成年ですね。夫は子を養育するという考えで子がもらう遺族基礎年金と遺族厚生年金で一緒に生活するという前提で特例として夫の受給権を支給停止するのです。ここで、この子が18歳以後の3月31日を越えたときは、夫の支給停止が介助されて夫が遺族厚生年金だけをもらいます(遺族基礎年金の受給権はありませんからね)。しかし、現実的には、妻が死んだときに、子が18歳未満で夫が55歳以上という組み合わせが今の日本でどれだけあるのかは私にはわかりかねますがね。最後にこの支給停止は、遺族となった子に父や母がいたときは、子の受給権は支給停止となります。それは遺族厚生年金の受給権があるということは未成年である、未成年の者は父や母がいるときには、父や母に養ってもらうという考え方だからですね。ただし、年金をもらう特例として遺族厚生年金を受給できる父との関係では、さきほどの特例が優先されます。親子間の支給停止も、以上のイメージで考えるとわかりやすくなりますね。今回のAの問題文では、「夫(国民年金法による遺族基礎年金の受給権を有する者に限る。以下同じ)の部分がおかしいですね。遺族基礎年金は「妻」「子」しかもらう可能性はないはずですね。よってAは×(今回の〔問 10〕の解答)となります。

Bは、「遺族厚生年金の受給権者である妻であってその権利を取得した当時40歳以上65歳未満であったもの又は40歳に達した当時当該被保険者若しくは被保険者の子で国民年金法第37条の2第1項(遺族基礎年金の遺族の範囲)に規定する要件に該当するものと生計を同じくしていたものが65歳未満であるときは、第60条第1項第1号の遺族厚生年金の額に同法第38条(遺族基礎年金の額)に規定する遺族基礎年金の額に4分の3を乗じて得た額を加算する。」という厚生年金保険法第62条第1項について問いかけてきている問題です。この条文は「中高齢の寡婦加算」といいます。そして今回のBは中高齢の寡婦加算の意味がわかっていますか?という問題です。中高齢の寡婦加算とは、その字の通り、「未亡人になったときに、もう若くなければ働きにくいでしょう。だから、その分の手当を出してあげますよ」という趣旨です。わかりやすい例で言えば、寡婦という限りは、受給権者は「妻」に、死んだ人は「夫」に限定されます。そして、夫が死んだときに妻が「遺族基礎年金と遺族厚生年金」の両方共にもらうことができる場合には、中高齢の寡婦加算は出ません。遺族基礎年金をもらうことができない妻に対して生活補助の意味合いで、遺族基礎年金の補助という意味合いで「中高齢の寡婦加算」というお金が支給されるのです。そして、中高齢とは今現在の厚生年金保険法の定義では「40歳以上65歳未満」となっています。65歳以上になれば、妻自身の老齢基礎年金が受給できる年齢となるので、「老齢基礎年金+遺族厚生年金」と「老齢基礎年金+老齢厚生年金」の好きな方を寡婦(未亡人)となった妻が選択できることとなっています。そして40歳未満は「中年」とは、言わないようです。少なくとも厚生年金保険法では、「中年」とは「40歳以上」という認識のようです。だから、中高齢の寡婦加算は「中年齢と高年齢で、まだ自分自身の年金をもらいはじめていない65歳未満」ということで、「40歳以上65歳未満」と決められています。この年齢条件で夫が亡くなったときに遺族基礎年金がもらえないのは、「子供がいない」「子供が18歳以後の3月31日を越えている」「障害等給1、2級の子供が20歳以上」という条件になります。このいずれの場合も、遺族基礎年金(具体的な額は遺族基礎年金=障害基礎年金=老齢基礎年金の満額の792,100円)の4分の3=594,100(100円未満の端数については、四捨五入ならぬ49捨50入で計算するから最低単位が100円となるのに注意)となります。これだけの額を毎年遺族厚生年金にプラスアルファして支給するのが中高齢の寡婦加算というものです。ここで、よ~く考えたあなたは次のことを思うでしょう。「そうかぁ~、夫が亡くなったときに40歳以上65歳未満で遺族基礎年金がもらえないときに、中高齢の寡婦加算という特例で遺族基礎年金の4分の3の60万円弱のお金がもらえるのだな。夫が死んだときに40歳以上であれば良いのだな。あっ、ちょっと待てよ。夫が死んだときには、16歳の子供がいたから、遺族基礎年金をもらうことができた未亡人は、もう2年過ぎて、子供が高校を卒業したら、42歳で年齢要件はいいのに、遺族基礎年金をもらえていたから、42歳から65歳までは、遺族厚生年金だけで、中高齢の寡婦加算はなくなるなぁ、なんか子供がもともといなかった42歳の人に比べて約60万円の差は大きいよなぁ。不公平じゃないかぁ?」そうですね。よく気が付きましたね。子供は高校卒業または障害を持った子供の場合は20歳以上で遺族基礎年金を妻ももらえなくなりますね。妻は40歳以降年を取るのはあたりまえとしても、妻が40歳の時点での子供は妻が65歳になるまでの25年の間に必ず遺族基礎年金をもらうことができない年齢になりますね。ですから上の厚生年金保険法第62条第1項の条文中の2行目に「又は40歳に達した当時当該被保険者若しくは被保険者であった者の子で国民年金法第37条の2第1項(遺族基礎年金の遺族の範囲)に規定する要件に該当するものと生計を同じくしていたものが65歳未満であるときは、」というフレーズがありますね。つまり、40歳の時点で遺族基礎年金をもらうことができる子がいるときは、そのまま遺族基礎年金と遺族厚生年金をもらっておいてください。子供が大きくなって遺族基礎年金をもらうことができなくなったときには、中高齢の寡婦加算として、もともと子供がいなかった中高齢の寡婦と同じ加算をしてあげましょう、という趣旨なのです、本当に法律はややこしく書いてありますね。だから、「法律は嫌い」「法律はむずかしい」という人が多いのです。今回のBの問題文は、「当該妻が40歳に達するまでの間、遺族厚生年金の額に遺族基礎年金の額の4分の3に相当する額が加算される」と無茶苦茶書いてありますね。40歳未満は中年ではありませんよ。そんな加算はもともとありえません。よってBは×(今回の〔問 10〕の解答)となります。

Cは「遺族厚生年金は、その受給権者が老齢厚生年金等のいずれかの受給権を有するときは、当該老齢厚生年金等の額の合計額から政令で定める額を控除した額に相当する部分の支給を停止する。」という厚生年金保険法第64の3,1項について問いかけてきている問題です。Cの問題文はまさに法律の条文の「その通り」だから、今回のCは○(正答肢)となります。しかし、この厚生年金保険法第64条の3,1項の意味をあなたは理解できますか?案外理解できない人が多いですよ。「あれ、一人1年金だろう、だから遺族厚生年金と老齢厚生年金はどちらかを選択するだけじゃないの?」と考えるのが普通ですし、それが原則の筈ですね。でも、考えてください。新聞に「春闘」という見出しでトヨタやソニーなどの労使交渉での給料のベースアップ要求と回答でたとえると、遺族年金と障害年金は満額回答でしたね。老齢年金だけ保険料納付済み期間の年数(本当は月数でカウントする)により、増減がありましたね。ですから、今回は多い遺族厚生年金をもともともらう権利があった人だから、その遺族厚生年金の受給権者が65歳になってその本人自身の少なくなった老齢厚生年金を選択しても、もともとの多い遺族厚生年金との差額を出してあげましょう、だから、あなた自身が長い間保険料をおさめてきた老齢厚生年金を選択してくださいよ、というものです。具体的な数字でいえば、ある人が遺族基礎年金792,100円と遺族厚生年金200万円を毎年もらっていたとします。その人が65歳になって遺族基礎年金792,100円と老齢厚生年金150万円を選択した場合は、少なくなった50万円を加算してあげましょう、というのが今回の厚生年金保険法第64条の3,1項の趣旨なのです。あなたは、「確かに、亡くなった夫の遺族厚生年金よりも、自分自身がずっと保険料をおさめてきた老齢厚生年金を選ぶのが良いという人もいるだろう。でも、そういう人は本来の少なくなった老齢厚生年金でも選んだかも知れないやン。なぜ、わざわざ国が損してまで、今回の例であれば、50万円も損するようなことをするのだろう?」と思うかもしれません。ここに、国の「ずるがしこい考え方」があるのです。遺族年金と障害年金は「非課税」です。それにたいして老齢年金は「所得扱い」で課税されます。実は、どちらを選択されても、名称が違うだけで、国が結局出すお金は同じ金額のお金を出しているのです。同じ金額を国が出すならば、まるまる100%あげっぱなしになる遺族年金や障害年金よりも、国が課税して税金をとれる「老齢年金」を選択して欲しいのです。少しでも、国の実質的な負担を軽くしたいのです(こんなことは、お役所に聞いてもいいませんよ。ご自身で払った保険料での老齢年金の方が、せっかく長い間払い込んだのだから、気は持ち的にもよいのではないですか・・・と窓口の職員はうまくいいますよ)。だから、わざわざ「少なくなった差額を補充してあげますから、あなたが長い年月保険料を払ってきた老齢年金を選択してくださいな」と「ほ~ほ~ほたるこい、こっちの水はあ~まいぞぅ~」と誘っているのです。この背景をイメージできると今回の条文内容の不思議さに納得できるはずです。

Dは障害厚生年金の受給要件をしっかりとわかっていますか?という問題です。Dの文章自体は「遺族厚生年金は障害等給1級又は2級に該当する障害の状態にある障害厚生年金の受給権者が、死亡したときは、その遺族に支給する。」という厚生年金保険法第58条1項3号の文章通りで○(正答肢)となります。ただ、この条文を覚えていなくても、障害厚生年金の受給権者ということは、「被保険者期間の3分の2以上の保険料納付済期間または保険料免除期間が必要である」という保険料納付要件を充たして受給権者になっている、つまり障害厚生年金をもらっていたのです。いちど、受給資格を満たした人が死んでも、資格に変更はありません。死んだから、保険料納付要件が減ってしまうということはありません。老齢厚生年金をもらっていた人が亡くなった場合も同じ扱いです。

Eは「子又は孫の有する遺族厚生年金の受給権は、次の各号のいずれかに該当するに至ったときは、消滅する。
①子又は孫について18歳に達した日以後の最初の3月31日が終了したとき。ただし、子又は孫が障害等給の1級又は2級に該当する障害の状態にあるときを除く。
②障害等給の1級又は2級に該当する障害の状態にある子又は孫について、その事情がやんだとき。ただし、子又は孫が18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるときを除く。
③子又は孫が、20歳に達したとき。」という厚生年金保険法第63条2項について問いかけてきている問題です。すごく基本的な問題ですね。もちろん○(正答肢)となります。「えっ、障害厚生年金の受給権者とあるよ、だから20歳までじゃないの?」と思ったあなたは「出題者の引っかけ問題にひっかかってますよ~ん。」上の条文は「1級又は2級に該当する」とありますが、「3級」については、一切触れていません。考え方のイメージとして、なぜ障害等給の1級や2級ならば、20歳まで延長になるのでしょうか。それは、障害等給の1級や2級の人は、あまりにも障害の状態が重すぎて、働くことはおろか、自立した生活自体さえ困難である、という認識で日本国憲法第25条の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」という法律を根拠にしての「生活保護」つまり、20歳以降は障害基礎年金をもらうことができます。その状態につなげるために、一般的な子は高校卒業相当までの年齢条件なのに、障害等給1級と2級の子は20歳まで続けます。3級はそこまでの保護にはおよばない、と考えられているわけなのですね。よって、ひっかけ問題でのEは○(正答肢)となります。

結論として今回の〔問 10〕の解答はなぜか「A・B」の2つとなります。

本当に厚生年金保険法は、社会保険労務士試験受験生にとっては「ふか~い」科目でしたね。

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