第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識 〔問 6〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識 〔問 6〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説

労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識

〔問 6〕 国民健康保険法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

A 被保険者が闘争、泥酔または著しい不行跡によって疾病にかかり、または負傷したときは、当該疾病または負傷に係る療養の給付等は、その全部または一部を行わないことができる。

B 療養の給付は、旧介護保険法第48条第1項第3号に規定する指定介護療養施設サービスを行う療養病床等に入院している者については、行わない。(一部改正)

C 被保険者が、自己の故意の犯罪行為により、または故意に疾病にかかり、または負傷したときは、当該疾病または負傷に係る療養の給付等は、行わない。

D 保険医療機関等は療養の給付に関し、市町村長(特別区の区長を含む。)の指導を受けなければならない。

E 保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、または差し押えることができない。

皆様、こんにちは。今回の解説をはじめさせていただきます。

問題文に「国民健康保険法に関する・・」とありますね。国民健康保険法とは「①国民健康保険法は、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もっと社会保障および国民保健の向上に寄与することを目的とする。②国民健康保険は、被保険者の疾病、負傷、出産又は死亡に関して必要な保険給付を行うものとする。」という国民健康保険法第1条、第2条に目的が明示されています。この条文は私が持っている社会保険労務士六法では853ページに掲載されていますが、健康保険法を見てみると、「健康保険法は、労働者の業務外の事由による疾病、負傷若しくは死亡又は出産及びその被扶養者の疾病、負傷、死亡又は出産に関して保険給付を行い、もって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。」と健康保険法第1条に規定されています。ついでに、労働者災害補償保険法も見てみると、「労働者災害補償保険法は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかった労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もって労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。」という労働者災害補償保険法第1条に規定されています。

以上の3つの法律を比べると次のようになっています。

労働者が仕事関係で保険が必要な場合は「労働者災害補償保険」で面倒を見る。 労働者が仕事に関係なく保険が必要な場合は「健康保険」で面倒を見る。 労働者以外の者が保険が必要な場合は「国民年金保険」で面倒を見る。

となります。

結論として、社会保険労務士試験の「一般常識」科目内での「国民健康保険法」の問題を考えるときには、今まで学習した「労災保険法」「健康保険法」の考え方を使って「国語力」で解けばよい、というのが私があなたにおすすめする解法です。では、実際に問題を一緒に考えてみましょうか。

Aの問題文は「・・闘争、泥酔または著しい不行跡・・」というフレーズがありますね。私は過去の解説で「故意=しないことができる」「それ以外=一部しないことが出来る」という説明をしましたね。具体的な箇所を言えば、健康保険法〔問 8〕を見て頂くと、

↓↓↓ここからが健康保険法〔問8〕Cの解説です。↓↓↓

Cは「保険者は、被保険者又は被保険者であった者(日雇特例被保険者又は日雇特例被保険者であった者を含む。)が、正当な理由なしに療養に関する指示に従わないときは、保険給付の一部を行わないことができる。」という健康保険法第119条について問いかけてきている問題です。Cの問題文の「全部」はありませんので、Cは×(誤答肢)となります。

この給付制限も受験生の頭を悩ませる問題ですね。次のように覚えて下さい。

本来は困っている人のための保険給付の筈ですが、保険給付をしないで良い位、悪質なことをした場合は、給付制限になるという考え方です。

①絶対的給付制限→最悪な行為をした人にはその人個人に対する保険給付は行いません。 健康保険法第116条に「被保険者又は被保険者であった者(日雇特例被保険者又は日雇特例被保険者であった者を含む。)が、自己の故意の犯罪行為により、又は故意に給付事由を生じさせたときは、当該給付事由による保険給付は、行わない。」とあります。 ポイントは「故意(結果を予想した行為)」という言葉が入っているかどうかになります。これは、わざと人を殺した(故意に人を殺した)場合には、遺族年金がもらえないといった厚生年金保険法や国民年金法の規定と同じです。何かもらうために故意(わざと)の行為に対しては、厳しい対応、つまり保険給付は行われません。

②全部制限(一部制限も含む)→故意ではなくても、重大な過失(非常識な行為)に対しては、保険者が判断して、給付をやめることができますよ、という規定です。 健康保険法第117条に「①被保険者(日雇特例被保険者を含む。)が闘争、泥酔又は著しい不行跡によって給付事由を生じさせたときは、当該給付事由に係る保険給付は、その全部又は一部を行わないことができる。②保険者は、保険給付を受ける者が、正当な理由なしに、文書その他の物件の提出若しくは提示命令に従わず、又は職員の質問若しくは診断に対し答弁若しくは受診を拒んだときは、保険給付の全部又は一部を行わないことができる」とあります。 ポイントはまだ保険給付を受けていない者が常識はずれな行動をとれば、保険給付をしないと考えても良い、という規定です。

③一部制限→保険給付の一部を行わないことができる(ちょっと損させるよ、というニュアンスです)。 健康保険法第119条に「保険者は、被保険者又は被保険者であった者(日雇特例被保険者又は日雇特例被保険者であった者を含む。)が、正当な理由なしに療養に関する指示に従わないときは、保険給付の一部を行わないことができる」とあります。 ポイントは「療養に関する指示に従わない」というフレーズが入っていることです。つまり、もう保険給付をしてもらうことは決定して、保険給付(療養の給付→治療)が始まっています。イメージとして、お医者さんが「注射をしますから、シャツをめくって下さい」と指示したときに、「いやだぁ~、エッチィ~」と言って、指示に従わないときには注射をしなくても良い→一部の保険給付をしないことができる、というニュアンスです。イメージにすると、とてもわかりやすいですね。

まとめると、「故意」という単語が入っていれば、「保険給付は行わない」 「常識はずれな行動」は、「保険休部の全部又は一部を行わないことができる」 「療養に関する指示に従わない」→「保険給付の一部を行わないことができる」 というくくり方で、受験生が悩む「給付制限」の問題はこれからのあなたにとっては、得点源となりますね。

ながながと解説してきましたが、再確認すると、Cの問題文中には「療養に関する指示に従わない」とあるので、「保険給付の一部を行わないことができる」となります。よって、Cは×(誤答肢)というように、条文をきっちりと覚えていなくても、難問である「給付制限」の問題に対する答えが出ましたね。

↑↑↑ここまでが健康保険法〔問 8〕Cの解説でした。↑↑↑

この解説の中で、私は まとめると、「故意」という単語が入っていれば、「保険給付は行わない」 「常識はずれな行動」は、「保険給付の全部又は一部を行わないことができる」 「療養に関する指示に従わない」→「保険給付の一部を行わないことができる」 というくくり方で、受験生が悩む「給付制限」の問題はこれからのあなたにとっては、得点源となりますね。

と言っています。今回のAの問題文は「・・闘争、泥酔または著しい不行跡・・」とありますので、「故意」「常識はずれな行動」「療養に関する指示に従わない」の3パターンのどれかに分類するとしたら「常識はずれな行動」になりますね。ですから「保険給付の全部又は一部を行わないことができる」という結果になりますので、Aの問題文は「ずばりその通り」で○(正答肢)となります。本当は、国民健康保険法第61条を覚えていれば、その条文通りの問題なのですが、私個人の見解としては、一般常識の社会保険科目は「国語力」を駆使して解く癖をつけてください。社会保険労務士試験本番では、役に立つと思っています。

Bの問題文は「・・介護保険法に規定する・・・」というフレーズがありますね。これも私が過去に解説した健康保険法〔問 9〕Dの解説を見てみると、

↓↓↓ここからが健康保険法〔問 9〕Dの解説です。↓↓↓

Dは「被保険者に係る療養の給付又は入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費、家族療養費若しくは家族訪問看護療養費の支給は、同一の疾病又は負傷について、介護保険法の規定によりこれらに相当する給付を受けることができる場合には、行わない。」という健康保険法第55条2項について問いかけてきている問題です。健康保険と介護保険でバッティングした場合には、介護保険の給付が優先し、健康保険の給付は行われません。考え方としては、一般法と特別法の考え方をしてください。たとえば、使用者が、労働者を解雇したいと思ったときには、一般法である民法では、2週間前に労働者に伝えれば良いことになっていますが、特別法の労働基準法では、その倍以上の30日前に通知しなければならない、そうでない場合にはその日数分の解雇予告手当を払いなさい、とより労働者(社会的弱者)に手厚くなっています。一般法と特別法が同じ事案に対してバッティング(重なった)ときは、特別法が優先です。特別法とはより狭い範囲で、より社会的弱者に手厚い法律なのです。では、健康保険法と介護保険法では、どちらが一般法でどちらが特別法の関係でしょうか、そうですね、介護保険法の方がより狭い範囲で、より社会的弱者に対する手厚い法律ですね。だから、健康保険法と介護保険法がバッティングした場合は、介護保険法の保険給付が優先と覚えておいてください。この考え方は、他の問題で悩んだ時にも応用が利きますよ。Dは問題文中に「死亡」という併給がありえない語句が入っていますね。よってDは×(誤答肢)となります。

↑↑↑ここまでが健康保険法〔問 9〕Dの解説でした。↑↑↑

という以上の解説の中で「では、健康保険法と介護保険法では、どちらが一般法でどちらが特別法の関係でしょうか、そうですね、介護保険法の方がより狭い範囲で、より社会的弱者に対する手厚い法律ですね。だから、健康保険法と介護保険法がバッティングした場合は、介護保険法の保険給付が優先と覚えておいてください。この考え方は、他の問題で悩んだ時にも応用が利きますよ。」とありますね。

今回のBの問題文も同じ考え方をしてください。よってBは○(正答肢)となります。このBの問題文も国民健康保険法第36条の条文そのままですが、私は条文を覚えることよりも「国語力」で解くことをおすすめします。

ちなみに今回のBの問題文で法改正が行われたことについては http://d.hatena.ne.jp/hoti-ak/20120915 のURLをご覧下さい。

Cの問題文は、さきほども解説した「故意」のいうキーワードがあるので、「行わない」ですね。よってCの問題文は○(正答肢)となります。

Dの問題文は私は「むずかしい」と感じています。たしかに、国民健康保険法は「市町村」が保険者です。市町村は国年健康保険及び国民年金第1号被保険者関係の事務手続きやその他の管理を行います。だから、今回の問題にひっかかってしまうのですね。基本に戻りましょう。健康保険法で勉強した「保健医療機関及び保険薬局」とは、なんだったでしょうか。保険(健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、国家公務員共済組合法又は地方公務員等共済組合法)を使う医療診療や薬剤調剤を行うことが出来る保健医療機関は「厚生労働大臣の指定」をうけなければならない、と健康保険法第35条で勉強しました。よって保健医療機関に指導を行うことが出来るのは厚生労働大臣(再委任で都道府県知事まで)のレベルなのです。これはひっかかっても仕方がないと思います。だから、条文をきちんとご紹介します。「①保健医療機関等は療養の給付に関し、保険医及び保険薬剤師は国民健康保険の診療又は調剤に関し、厚生労働大臣又は都道府県知事の指導を受けなければならない。②厚生労働大臣又は都道府県知事は、前項の指導をする場合に置いて、必要があると認めるときは、診療又は調剤に関する学識経験者をその関係団体の指定により指導に立ち会わせるものとする。ただし、関係団体が指定を行わない場合又は指定された者が立ち会わない場合は、この限りでない。」という国民年金法第41条に規定があります。よってDは×(今回の〔問 6〕の解答)となります。

Eの問題文は、「まさにその通り」ですね。労災法、健康保険法でも全く同じでしたね。よってEは○(正答肢)となります。

結論として今回の〔問 6〕の問題文は「D」が解答となります。

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