第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 労働基準法及び労働安全衛生法 〔問 5〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 労働基準法及び労働安全衛生法 〔問 5〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説

労働基準法及び労働安全衛生法

〔問 5〕
Aは「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、又は就業規則その他これに準ずるものにより、一箇月以内の一定の期間を平均し一週間当たりの労働時間が前条第一項の労働時間を超えない定めをしたときは、同条の規定にかかわらず、その定めにより、特定された週において同条二項の労働時間を超えて、労働させることができる。②使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。」という労働基準法第32条の2について問いかけられている問題です。この1ヶ月単位の変形労働時間制というものは、あらかじめ、定められた内容で就業する、という所に意味があるのです。せっかく、時間を掛けてお互いが納得して決定した労働時間を「使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更するよう」では意味がありません。よって、Aは○(今回の〔問 5での解答〕)となります。

Bは「第32条の4 1使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、第32条の規定にかかわらず、その協定で第2号の対象期間として定められた期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲内において、当該協定(次項の規定による定めをした場合においては、その定めを含む。)で定めるところにより、特定された週において同条第1項の労働時間又は特定された日において同条第2項の労働時間を超えて、労働させることができる。
1.この条の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲
2.対象期間(その期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、1箇月を超え1年以内の期間に限るものとする。以下この条及び次条において同じ。)
3.特定期間(対象期間中の特に業務が繁忙な期間をいう。第3項において同じ。)
4.対象期間における労働日及び当該労働日ごとの労働時間(対象期間を1箇月以上の期間ごとに区分することとした場合においては、当該区分による各期間のうち当該対象期間の初日の属する期間(以下この条において「最初の期間」という。)における労働日及び当該労働日ごとの労働時間並びに当該最初の期間を除く各期間における労働日数及び総労働時間)
5.その他厚生労働省令で定める事項」という労働基準法第32条の4について問いかけてきている問題です。

今回の問題については「変形労働時間制」について、あなたはよくわかっていますか?という聞き方をされていますね。ここで、変形労働時間制というものは
「1年単位の変形労働時間制」
「1箇月単位の変形労働時間制」
「1週間単位の変形労働時間制」
というものがあります。
労働時間が人体に及ぼす悪影響を考えて、労働基準法では、40時間と8時間、つまり1週間では総計40時間以内、1日では8時間以内の労働時間にするようにと決めています。これらの時間を超えて労働者を働かせると、その事業所(会社のことです)や、使用者(経営者のことです)に、罰金や懲役刑などの罰則が科されますね。それを逃れるためには、「さぶろくきょうてい」と言って、労働基準法第36条に規定されている厳格な約束を労働者側と使用者側でむすび、国に届けでなければいけないとされていますね。この約日区のことを労働基準法第36条にのっとった労働者と使用者の決まり事、労働基準法第36条での労使の協定、第36条労使協定、三六協定、さぶろくきょうてい、という省略の仕方で、さぶろくきょうてい、といいますね。
さて、急に週40時間、1日8時間の原則的な労働時間を超えて労働者を働かせるときは、さぶろくきょうていをむすんで、届け出たら良かったですね。
しかし、会社というものは、去年も今年も来年も同じようなことをくり返していますね。その都度、さぶろくきょうていを締結して届け出るのではめんどくさくてしかたがあのませんね。お役所の方も、正直な気持ちとしては「めんどくさいなぁ」と思っています。そこで、変形労働時間制というものが考えられました。これは、「1年以内」「1箇月内」「1週間以内」という期間内での平均をとれば、原則の週40時間、1日8時間の労働時間を守っています。しかし、特に忙しい期間(特定期間)だけは、週40時間、1日8時間の原則労働時間を超えますよ、ということをあらかじめきめておく制度のことです。
具体的にいえば、季節物を作っている会社を思い浮かべてください。
3月の雛祭り人形、5月のこいのぼり、12月のクリスマスツリーなどを作っている会社は、それぞれの行事の数ヶ月前は本当に忙しいと思います。その反面、1月や2月に関してはクリスマスツリーを作っている会社は、あまり忙しくなさそうだなぁということは、想像しやすいですね。また、北海道の建設会社なども、夏場にはフル回転で作業をして、雪で雪で作業が出来ない冬場の分まで働くと言うことは、よく知られていることですね。たとえば、ある会社が忙しい半年は、「月曜日9時間労働、火曜日9時間労働、水曜日9時間労働、木曜日9時間労働、金曜日9時間労働、土曜日と日曜日は休み」、暇な半年は「月曜日5時間労働、火曜日5時間労働、水曜日5時間労働、木曜日5時間労働、金曜日5時間労働、土曜日と日曜日は休み」とする一年間単位の変形労働時間制をとっても、良いわけです。この場合は、「一年間の平均は1週間の労働時間は(45+25)÷2=35時間、1日の労働時間の平均は(9時間+5時間)÷2=7時間という優良企業になりますね。この一年間単位の変形労働時間制を採用する利点は使用者側にとっては、「割増賃金」をはらわなくても良いという点です。もい、変形労働時間制をとらなければ、9時間労働の日はずっと割増賃金を払わなくてはならなくなりますね。また、労働者側からの利点は、あらかじめ忙しい時期と、暇な時期がはっきりわかっているので、家族旅行などのプライベートの計画がたてやすいという点があります。また、1年単位の変形労働時間制を採用しているところは、大企業が多いです。もっと具体的な職種を言えば、「百貨店」がそうですね。お中元のシーズンがいそがしくて労働時間が増えるはずです。逆に「2月」が1番売れ行きがわるいということは、労働時間も減るだろうなぁ、ということは、少し考えたらよくわかりますね。また、正直なところ、零細企業では、1年後の従業員の労働時間の計画をたてるなどは現実問題としてはむずかしいのかもしれませんね。
次に「1ヶ月単位の変形労働時間制」は、1年を通じては同じような忙しさなのですが、一箇月の中で特に忙しく働いてもらう期間と、比較的暇な期間がある仕事で採用されていますね。もっと具体的にいえば、不規則な勤務形態が継続している人ですね。たとえば、看護師さんや電車の運転士さん、船や飛行機の乗務員さんなどですね。また、建設現場で働く人などもそうですね。ずっと建設工事の仕事があるとは限りませんからね。具体的な限度時間としては、その一箇月での平均の労働時間は週40時間以内、1日に8時間以内であればOKという考え方が1ヶ月単位の変形労働時間制なのですね。また労働時間の最高限度時間として一箇月段位でも1年単位でも1週間に52時間以内、1日に10時間以内であればよいとされています。また、連続して働かせるのは12日以内までとされています。つまり、1番きつい限度時間としては、
第1週目に日曜日は休み、今週スタートの月曜日8時間、火曜日8時間、水曜日8時間、木曜日8時間、金曜日10時間、土曜日10時間、翌週スタートの日曜日10時間、月曜日10時間、火曜日8時間、水曜日8時間、木曜日8時間、金曜日8時間、土日は休みという労働時間を設定したとしても、限度時間の1週間52時間以内、1日10時間以内、連続12日以内という条件はクリアーしています。そして、例えば、第三週の月曜日は4時間、火曜日は4時間、水曜日は4時間、木曜日は4時間、金曜日は4時間、土日は休み第4週目の月曜日は4時間、火曜日は4時間、水曜日は4時間、木曜日は4時間、金曜日は4時間、土日は休みという「1ヶ月単位の変形労働時間制」を設定したとしても、第1週目の労働時間は52時間、第2週目の労働時間は52時間、第3週目の労働時間は20時間、第4週目の労働時間は20時間、で一箇月の平均としては(52+52+20+20)÷4=1週間当たりの労働時間の平均は36時間となり、40時間以内クリア。1日あたりは第1週目は6日間で52時間労働、第2週目は6日間で52時間労働、第3週目は5日間で20時間労働、第4週目は5日間で20時間労働となるので、全体の平均は(52+52+20+20)÷(6日+6日+5日+5日)=144時間÷22日=6.5454・・・≒6.5日となり、1日8時間以内となりOKです。これが1ヶ月単位の変形労働時間制の考え方です。
最後に一週間単位の非定型的変形労働時間制がありますが、これは常時使用する労働者が30人以内の小売業、旅館、料理店及び飲食店の事業であることとされています。限度は1週間40時間以内で1日10時間以内です。具体例としては、土日祝祭日が忙しいお店というイメージですね。たとえば、月曜日と火曜日と水曜日が休みで、木曜日10時間、金曜日10時間、土曜日10時間、日曜日10時間という労働時間の決定も出来ますし、普段は月曜日8時間、火曜日8時間、水曜日8時間、木曜日8時間、金曜日8時間で週に40時間労働で働いてもらっているAさんに、来週は土日に急なお客が増えることになったから、Aさんの来週のシフトは、月曜日と火曜日はお休みで、水曜日6時間、木曜日6時間、金曜日8時間、土曜日10時間、日曜日10時間での週40時間労働で働いてもらいます、というようなことが柔軟にできるのが一週間単位での非定型的変形労働時間制です。ただし、「1年単位の変形労働時間制」「1ヶ月単位の変形労働時間制」「1週間単位の非定型的変形労働時間制」のいずれも、その期間がはじまるまで、労働者側と使用者側の間で、話し合いをして、そういう働き方を「する・させる」ということに合意をしなければいけません。そして、後々のトラブル防止のために合意をお役所に届け出なければなりません。そういう考え方で、社会保険労務士試験の本試験の問題を考えるようにすると、細かい条文を少々忘れたとしても、案外正答を導き出すことができるものです。そういう支店で、Bの問題文を読むと「どのような場合においても対象期間における各労働日ごとの労働時間をあらかじめ特定しておく必要はない。」というフレーズは明らかに誤りだとわかります。労働時間というものは、何時から働き始めて、何時で終わる。そのために、家を何時に出て、職場に何時について、着替えや道具の準備などに何分かかって、そして始業時刻の何時何分に間に合う、仕事が終わったら、着替えや後かたづけをして、どういう手段で家に帰るから、何時に家について、何時に子どもをお風呂に入れることが出来る、だから、○○ちゃん、お父さんまたはお母さんは△△時に帰ってくるから、かしこくして待っててね、などという予定をたてるためにも予定を知っておくことは必要なものです。その労働時間がいつもと違うから、労働者側と使用者側で相談して合意の結果を約束事として決め、万が一のトラブル防止のために、公式にお役所に届けておく、いうのが変形労働時間制やあるいは他の問題に問われることになる「さぶろくきょうてい」などの考え方なのです。そして、今回の解説とは関係ありませんが、社会保険労務士試験で「絶対」とか「必ず」「どのような場合でも」というフレーズが出てきたら、ほとんどの場合は、×(それは間違っているよ)という考え方で正解を導き出せることができます。なぜならば、社会保険労務士という資格は、「人と人のつながり」をサポートする資格です。人と人との関係では、「例外」はよくあることです。「原則」通りにものごとがすすむとは限りません。ですから、その場その場でお互いに知恵を出し合って、協力し合って、物事を解決してすすめていくのです。ですから、その基準のもとになる法律の条文で「絶対」「必ず」「どのような場合でも」などというフレーズが出てくるわけはありません。そういう考え方だけでも、今回のBの問題文は正解を導き出すことができます。よってBは×(誤答肢)となります。

CはさきほどのBの解説でもご紹介しましたが、「1年単位」「1ヶ月単位」「1週間単位」のいずれも1日の労働時間の上限は10時間です。また、「労働時間の上限は定められていない」というフレーズは、日本国内ではありえない、というイメージを持っておいてくださいね。よってCは×(誤答肢)となります。

Dは「労働時間は、事業場を異にする場合でも、労働時間に関する規定の適用については通算する。」という労働基準法第38条1項について問いかけてきている問題です。あたりまえです。通算されないならば、たとえば、Aさんが月曜日の8時~16時まで1丁目の喫茶店で働いて、17時から25時(夜中の1時)まで2丁目のスタンドバーで働いて、夜中の2時から朝の7時まで3丁目のパン屋さんで働いて、また朝の8時~16時まで1丁目の喫茶店で働いて・・・、ということが許されるのですか。それぞれの店主がAさんの働きぶりを知っていて、「給料はたくさん出すからずっと働いてくれ」と言って、Aさんが倒れるまで、ずっと働かせることができるのですか。Aさんが、「実は、他でも働いていて、労働時間は8時間を超えているのですが。。。」と言っても、「そんなの関係ねぇ~、そんなの関係ねぇ~。」というどこかの芸人が言ったような台詞(セリフ)を言って、「シランプリ」するのですか。それこそ「ありえねぇ~」の世界ですね。労働基準法第38条1項を知らなくても、頭の中に、問題文のとおりになるならば労働者はどのようになるのだろぁねというイメージを描くと正解を導き出すことができますね。よってDは×(誤答肢)となります。

Eは「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。」という労働基準法第38条の2について問いかけてきている問題です。一昔前で言えば、一回りの営業マンがこの条文にあてはまる就業形態の典型的なパターンでしたが、今は在宅ワークも増えていますね。今回の問題文は在宅ワークについての問題です。労働時間という定義は「使用者の指揮命令をうけている、使用者の管理下におかれている」という考え方ですから、会社の昼休みでも、弁当を食べながら、電話番をしている場合でも、自分勝手に近くの公園などにいくことができないので、労働時間である、というご説明は、さきほどの〔問 4〕の解説の最初にご紹介しましたね。そういう基準で言えば、今回の携帯電話やパソコンなどの情報通信機器を用いて行う在宅勤務の場合でも、実態を考えて判断するのですが、さきほどの〔問5〕のBの解説でもご紹介したように「絶対」「必ず」「どのような・・・でも」とあれば、問題文を疑ってかかってください。よって今回のEは×(誤答肢)となります。

結論として今回の〔問 5〕の回答は「A」となります。

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