第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 労働基準法及び労働安全衛生法 〔問 7〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 労働基準法及び労働安全衛生法 〔問 7〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説

労働基準法及び労働安全衛生法

〔問 7〕
労働基準法上の労使協定等に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

A 労働基準法第36条第1項等に定める労働基準法上の労使協定が有する労働基準法の規制を解除する効力(労働基準法上の基準の強行的・直律的効力〔13条〕の解除、労働基準法上の罰則〔117条以下〕の適用の解除)は、労使協定の締結に反対している労働者には及ばない。

B 労働基準法第36条第1項等に定める労働基準法上の労使協定を締結する労働者側の当事者は、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者とされており、労働者の過半数を代表する者の選出は、必ず投票券等の書面を用いた労働者による投票によって行わなければならない。

C 労働基準法第41条第2号に定めるいわゆる管理監督者に当たる者であっても、労働基準法第9条に定める労働者に該当し、当該事業場の管理監督者以外の労働者によって選出された場合には、労働基準法第36条第1項等に定める労働基準法上の労使協定を締結する労働者側の当事者である過半数を代表する者になることができる。

D 労働基準法第38条の4第1項に定めるいわゆる労使委員会は、同条が定めるいわゆる企画業務型裁量労働制の実施に関する決議のほか、労働時間・休憩及び年次有給休暇に関する労働基準法上の労使協定に代替する決議を行うことができるものとされている。

E 労働基準法第38条の4第1項に定めるいわゆる労使委員会の労働者側委員は、当該事業場の労働者の投票又は挙手によって選出されなければならない。

皆様、こんにちは。早速今回の解説をはじめさせていただきます。

労使協定についても、今ひとつあやふやな状態の受験生が多いのではないかと思っています。言葉の意味として「労使協定」とは、「労使の協定」つまり「労働者側と使用者側での協定(相談して決めた内容)」という意味と国語辞典には紹介されていますね。その文字通りの解釈で良い訳なのです。では、社会保険労務士試験に通用する労働基準法での「労使協定」についてご説明します。

労働基準法の目的は、「金をもらうから弱い立場になってしまう労働者の人権を、金を払うから強い立場になっている使用者の横暴から守る」という目的があります。使用者側はどうしても、「利益」をあげるために、コストダウンの意味合いで、人間である労働者にも「機械」に接するときと同様に「限界まで、あるいは限界を超えて過酷に」使用してしまう歴史があります。それを阻止するために、「労働基準法」が昭和22年の戦後の民主的な時代になったときにつくられました。ただ、使用者と労働者個人が相談したとしても、結局「いやならやめてもらっても、ワシは困らないんだよ」という相談結果になることもそれまでの歴史が証明していました。そこで、「日本国憲法第28条の労働団結権」の「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」という平成21年の第41回社会保険労務士試験の午前の選択問題にも、「労働一般常識」で出題されるくらい大切な「労働組合」活動を推奨する流れになっています。労働者一人一人は、使用者に比べるととても力が弱い立場なのですが、全員が一致団結して「それではストライキしますよ」といって、労働者全員が工場に行かない、働かない、では使用者側も、「儲けることが出来ない」から、工場の維持費や原材料が傷む(さびる、くさるなど)で大きな損をするから、「仕方がないから、賃金をこれだけあげてあげよう」などど、「春闘」という文字が、毎年春に新聞のTOP記事になるように春闘で会社の経営者側と交渉する立場にあるのが労働組合なのです。つまり、使用者と相談する人は「労働者の一致団結した団体」そのものなのです。この団体のことを「労働組合」といいます。なかには、別の呼び名の団体もあるかもしれませんが、話をわかりやすくするために、ここでは労働者の一致団結した団体のことを「労働組合」という言葉で統一します。そして、使用者側と労働組合側で「労働者の人権(生活)」のために、色々なことを相談して決めるわけです。この相談して決めることを「協定」といいますね。ただ、今の世の中は「民主主義」です。民主主義というものは、全体の意見の総意でものごとを決定します。全員一致の意見や考えであればそれで良いのです。たとえば、「人の命は何よりも大切である」などは、全員一致する可能性が高いと思います。しかし、大阪から東京まで労働者みんなで異動するのに「バスで移動」「電車で移動」「船で移動」「飛行機で移動」などは、意見が分かれる可能性が高いです。そのように意見がわかれたとしても、最終的に全体の総意とするためには、「過半数」の意見が一致すればよい、という考え方が「民主主義」の考え方です。「多数決」という言葉もよく耳にしますね。以前、日本も開催地として立候補したのに負けたサッカーのワールドカップの開催地決定の理事選挙も、得票数が1番少ない国をはずしていって、最終的に過半数の得票数を獲得する国が出てくるまで投票をくり返すとテレビや新聞その他で大きく報道されていましたね。つまり、民主主義の世界では物事を決定するのは「多数決の過半数」で決めると良いのです。つまり、労働組合も、その事業所(会社や職場のことです)全体の過半数以上の労働者で組織されていないと無効とされます。なぜならば、過半数でなければ、その労働組合と協定(相談して決定)しても、あとでひっくりかえされる可能性があるからです。労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は、労働組合であろうがなかろうが、関係なしに労働者全体の過半数を代表する者が使用者側と協定(相談して決める)を結びます。もちろん口約束では、あとで「言った。言わない。」というトラブルになることが予想されるので、書面(文書)で、両当事者が署名します。また、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合の、過半数を代表する者は、労働者全体が選んだという投票、挙手などの手続きで選ばれることが必要です。でも、この方法でないといけないというしばりはありません。あくまでも代表者を決めるという目的が達成されれば民主的な方法であれば何でも良いのです。ですから、書面に残さなければいけないとか投票でないといけないという絶対的なしばりはないのです。そして、過半数代表者は使用者側の人間ではいけません。これは労働者つまり弱い立場側の代表という意味合いですね。結論として実質的な監督や管理職の者が過半数代表者となってはいけません。そんなことをしたら、労使協定の意味がなくなってしまいます。

以上の「労使協定」の流れをイメージしたうえで、問題文を見ていきましょう。

Aの問題文は「労使協定の締結に反対している労働者には及ばない」というフレーズがダメですね。さきほどの例でいえば、「バス」「電車」「船」「飛行機」のどの移動手段で大阪から東京に移動する、という事例で多数決によって「電車」で移動すると決まったのならば、「電車はいやだオレはいかない」と言うことはダメですよ、全体で決まったことには従ってくださいよ、でないと、あなた個人から使用者の切り崩しがスタートしますよ。そういう流れが積み重なって、労働者全体の待遇(人権)が悪くなったら、あなたが責任をとれるのですか、という考え方になります。民主主義というものは、全員がそれぞれの主張する意見を言うのはかまわないが、全体として決まった方針には従ってくださいよ、てないと大きな敵(使用者側)にまけてしまいますよ、というものです。だから、Aの問題文の「反対」しても従う、つまり効力は及びますよ。よってAは×(誤答肢)となります。

Bの問題文には「必ず・・・行わなければならない」とありますね。私は、この部分を診ただけで×(誤答肢)とします。実際の社会では実情にあわせて色々と根回しや変更をしなければならないことがたくさんあるのです。それらのもとになる法律から「必ず」「しなければならない」と言い切ることが必要かどうかは、よ~く、考えてください。この考え方が条文をしらなくても正解が導き出せる「国語力」となるのではないかと思っています。よってBは×(誤答肢)となります。

Cは「管理監督者」ならば、ダメですよ。密室で使用者側に有利な条件の協定(相談してきける)を結ばれてしますよ。よく考えてくださいね。よってCは×(誤答肢)となります。

Dは「労使委員会」という言葉が出てきましたね。労使委員会とは、

労使委員会とは、事業場において、賃金、労働時間などの労働条件について調査審議し、事業主に対して意見を述べることを目的としている委員会です。
使用者と、その事業場の労働者の代表者で構成します。
委員の半数については、
事業場の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者が
管理監督者(労働基準法第41条)以外の者の中から
事前に、指名されることについて同意を得て
任期を定めて指名する
ことが必要です。
人数についての規定は特にありませんが、労使各1名の合計2名からなるものは「労使委員会」として認められません。

企画業務型裁量労働制が導入できるのは、労使委員会が設置されている事業場となります。
対象労働者やみなし労働時間等必要な事項について労使委員会の委員の5分の4以上の合意による決議をし、それを労働基準監督署長に届け出ることによって可能になります。
企画業務型裁量労働制導入に関する労使委員会の決議は、「労使協定」によって代えることはできません。

(労使協定・・・会社が、事業場の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者と協議し、締結内容を書面にすることです。この協定に定めるところによって労働させると、労働基準法等の違反が免責される免罰効果を生じます。尚、行政庁への届出を要する場合があります。)

逆に、労使委員会の委員の5分の4以上の合意による決議で、労使協定に替えることができるケースがいくつかあります。

1ヶ月単位の変形労働時間制
フレックスタイム制
1年単位の変形労働時間制
1週間単位の非定型的労働時間制
一斉休憩の適用除外
36協定(届出必要)
事業場外のみなし労働時間制
専門業務型裁量労働制
年次有給休暇の計画的付与
年次有給休暇中の賃金
36協定(時間外・休日労働に関する労使協定)は、労使委員会の委員の5分の4以上の合意による決議であっても届出が必要ですが、それ以外のものは届出不要となります。

労使委員会の決議は、決議の有効期間中とその後3年間保存することが義務づけられています。また、その事業場の労働者に周知することも必要です。

まとめます。

労使委員会とは最低4人以上で構成する会議のメンバーのことで、労働者側と使用者側の間に発生する肢代問題を多数決で決議(会議である事柄を決めること)する委員会のことです。

イメージとして労使協定は、使用者側と労働者側が同じ立場の1対1で話し合って、結論を出します。

労使委員会は、使用者側から複数名、労働者側から複数名の同数が一緒になって会議をして労使間のトラブルなどについて解決法を多数決で決めます。ただし、全体の5分の4以上の決議が必要ですから、労使委員会での決定はかなり重い決定です。
わかりやすくいえば、最小単位の4人であれば、使用者も含めて4分の4でないと、決議要件の五分の四以上になりません。6人であっても、6分の5が同じ意見でないとダメです。労使協定のようにどこか落としどころを必ず見つけるのではなく、労使委員会は五分の四以上にならなければ、最初から話し合いはなかったものとなります。このイメージで労使協定と労使委員会との微妙な違いがわかるのではないかと思います。
ここで、問題文に戻りましょう。

Dの問題文は○(今回の〔問 7〕の解答)ですね。今もご紹介したように労使協定よりも、労使委員会の方が成立要件は厳しいのです。だから、労使委員会で成立した結果は、もちろん労使協定で決める結論の代わりとして使うことができます。よってDは○(今回の〔問 7〕の解答)となります。

Eの問題文は「されなければならない」という表現で、私は「いっぱつアウトぉ~」で×(誤答肢)にします。まぁ、きちんとした説明をすると、労使委員会のメンバーは使用者側と労働者側で同数がメンバーとなるのですが、もちろん、使用者側は使用者が選んだ人間になりますね。労働者側は、労働者のTOPが選んだ人間となります。TOPとは、もちろん労働者全体の代表者、つまり過半数代表者となります(全員が選んだ100%信任の代表者でも労働基準法では過半数代表者という言い方をします。)。過半数代表者が「君ならみんなのために頑張ってくれると思って選んだんだ。頼むよ。」「はい、幹事長、私はみんなのために頑張ります。」という熱い(?)シーンで選ばれるのです。労働基準法第38条では、
「労使委員会の委員の半数については、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者に厚生労働省令で定めるところにより任期を定めて指名されていること。」と労働基準法第38条4項に規定されています。
よってEは「君を選んだとして指名される意味の内容がない」ので×(誤答肢)となります。

結論として今回の〔問 7〕の解答は「D」となります。

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