第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 労働基準法及び労働安全衛生法 〔問 8〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 労働基準法及び労働安全衛生法 〔問 8〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説

労働基準法及び労働安全衛生法

〔問 8〕
労働安全衛生法に定める元方事業者に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

A 建設業に属する事業の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の数が労働安全衛生法施行令で定める仕事の区分に応じて一定数未満であるときを除き、これらの労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、統括安全衛生責任者を選任し、その者に元方安全衛生管理者の指揮等をさせなければならない。

B 製造業に属する事業の元方事業者は、関係請負人が、当該仕事に関し、労働安全衛生法又は同法に基づく命令の規定に違反しないよう必要な指導を行わなければならず、これらの規定に違反していると認めるときは、是正のため必要な指示を行わなければならないが、関係請負人の労働者に対しては、このような指導及び指示を直接行ってはならない。

C 建設業に属する事業の元方事業者は、土砂等が崩壊するおそれのある場所(関係請負人の労働者に危険が及ぶおそれのある場所に限る。)において関係請負人の労働者が当該事業の仕事の作業を行うときは、当該関係請負人が講ずべき当該場所に係る危険を防止するための措置が適正に講ぜられるように、技術上の指導等の必要な措置を講じなければならない。

D 造船業に属する事業の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、協議組織の設置及び運営を行うこと、作業場所を巡視すること、関係請負人が行う労働者の安全又は衛生のための教育に対する指導及び援助を行うこと等に関する必要な措置を講じなければならない。

E 製造業に属する事業の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、作業間の連絡及び調整を行うことに関する措置等の必要な措置を講じなければならない。

皆様、こんにちは。本日の解説をはじめさせていただきます。

ここからは労働安全衛生法の問題ですね。はっきり言って労働安全衛生法はむずかしいですよ。理由と致しましては、労働安全衛生法全体の分量はとても多いのに、実際に出題される量は少ないからです。それだけに過去問の内容は1つ1つきっちりと理解していきましょうね。

今回は、元方事業者についてわかっていますか?という問題です。

「元方事業者」とは何ですか?説明してください、と言われたらあなたはどうしますか。私ならば、次のように説明します。

元方事業者とは、親会社のことです。子会社や孫会社に仕事を一部まわす親会社のことです。

たとえば、あるビルを建てる注文を東京都の土木課から請け負ったA建設会社がそのビルの水回りの工事はB工務店に、電気関係はC工務店に、ガス関係はD工務店、内装や外装関係はEインテリア店に仕事を頼んだとします。全体の基礎工事や大まかなつくりはA建設会社が施行しますが、細かいところとしては他のBCDEのそれぞれの事業所(会社)にまかせます。ここで東京都からA建設会社が受け取ったお金は10億円で、そのうちB工務店には2億円、C工務店には1億円、D工務店には1.5億円Eインテリア店には、5千万円のお金をまわしたとします。この場合、A建設会社が「元方事業者」という扱いになります。BDCEの事業者はそれぞれAから仕事をまかされている、労働安全衛生法の用語では請け負っているということで、「請負人」という言い方をします。元方事業者であるA建設会社の人達とは、自分のところがメインで仕事をしているわけですから、「今週一杯で基礎工事が完了するから、来週からB工務店が水回りの工事をはじめて、再来週からD工務店ガス関係の工事で、その数日後にC工務店が電気関係の工事をスタートするな。ひととおり終わったら、Eインテリア店が内装をして、仕上げに外装をしてこのビルも完成だな」と分かっています。しかし、それぞれの「請負人」は自分のところが何をするかについては、よく分かっていますが、他の「請負人」の労働者達が、いつ、どのような作業をするかはよくわかっていないのです。ここで、連絡が不徹底という理由でのトラブルや事故が起こる可能性があります。実際に事故が起こってしまえば、「労災事故」として、労働者災害補償保険法での災害補償などが起動しますが、「1番良い方法」は、事故を起こさない、ことが大切です。そのために、全ての事情がよくわかっている「A建設会社=元方事業者」が、他の「請負人」や「請負人の労働者」がトラブルにあわないように、「連絡」「指導」「指示」などを行う必要があります。それは、労働安全衛生法第29条に「①元方事業者は、関係請負人及び関係請負人の労働者が、当該仕事に関し、労働安全衛生法又は同法に基づく命令の規定に違反しないよう必要な指導を行わなければならない。②元方事業者は、関係請負人又は関係請負人の労働者が、当該仕事に関し、労働安全衛生法又は同法に基づく命令の規定に違反していると認めるときは、是正のため必要な指示を行わなければならない。③前項(上記②)の指示を受けた関係請負人又はその労働者は、当該指示に従わなければならない。」と規定しています。これは、すべて「事故」「トラブル」がおきないようにという配慮ですね。1つの事業所(会社やお店のことです)だけで、仕事をするならば、連絡が行き届いているので、大丈夫なのですが、普段は見ず知らずの人達が1つのところで仕事をする場合には、どうしても「事故防止」のために、事前の配慮が必要ですね。それを労働安全衛生法では、法律として定めているわけです。また、特に事故がおきる可能性が高い「建設業」と「造船業」の2つを「特定事業」と言います。これらの2つに関しては、特に危険性が高いと言うことで、次の法律による規定がおかれています。

まずは、労働安全衛生法第29条の2で「建設業に属する事業の元方事業者は、土砂等が崩壊するおそれのある場所、機械等が転倒するおそれのある場所その他の厚生労働省令で定める場所において関係請負人の労働者が当該事業の仕事の作業を行うときは、当該関係請負人が講ずべき当該場所に係る危険を防止するための措置が適正に講ぜられるように、技術上の指導その他の必要な措置を講じなければならない。」とあります。もう少しわかりやすい表現に言い換えると、「建設業の工事をする親会社は、山や河川敷など、足下が悪くて土砂崩れで人が怪我したり、ブルドーザーなどがこけたりする可能性がある場所で仕事をする場合は、自分の会社のメンバーだけでなく、子会社のメンバーにもきちんと連絡指導を徹底して、みんなが安全に作業を完成させることができるようにしなさいよ。」となります。その工事の監督責任は全て親会社(元方事業者と言います)にあるのですよ、と言っているわけですね。
次に、労働安全衛生法第30条1項では「特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、次の事項に関する必要な措置を講じなければならない。①協議組織の設置及び運営を行うこと。②作業間の連絡及び調整を行うこと。③作業場所を巡視すること。④関係請負人が行う労働者の安全又は衛生のための教育に関する指導及び援助を行うこと。⑤建設業に属する事業を行う特定元方事業者にあっては、仕事の工程に関する計画及び作業場所における機械、設備等の配置に関する計画を作成するとともに、当該機械、設備等を使用する作業に関し関係請負人が労働安全衛生法又は同法に基づく命令の規定に基づき講ずべき措置についての指導を行うこと。⑥その他当該労働災害を防止するため必要な事項。」となっています。この条文を、わかりやすく普段使うような言葉で言い換えると、「建設業と造船業の2つの親会社は、特に事故が起こりやすい作業を伴うことが多いので、事故防止のために、①各会社の親方を集めてミーティング(注意事項の連絡会)をしなさい②実際に作業をする段取りをきちんと連絡しなさい(A電気店には「Bさんのところが、水道工事を来週の月曜日に終わらせるから、火曜日から現場に入って電気関係の工事をはじめてよ。」という連絡をした後で、「ごめん、ごめん、Bさんのところで雨のために一部やり直しがあって、月曜日終了予定が水曜日になっちゃったから、悪いけどA電気さんは、木曜日に現場にいくことにしてくれるかなぁ。」などという連絡を特定元方事業者(親会社)がきちんと責任をもってやりなさいよ。③実際に、作業をしているところを見に行って、工期が計画通りに進んでいるか、事故が起こりそうにないか、何かトラブルがないか、などを見て、安全衛生管理をきちんとするんだよ。④子会社の親方が、弟子にある機械の使い方を教えたり、工事の手順を教えたりするのに、よりくわしく説明したり、必要な資料や教材をわたしてあげなさいよ。⑤特に建設業は1番事故が多いので、仕事の手順や実際に使う機械などについて、くれぐれも手違いのないよう指導(ある目的に向かって教え導くこと)、つまり、その子会社がスムーズに工事をして、次の子会社(電気店やガス工務店その他の請負人)の工事を始めることができるようにスムーズに工事が終わるように、細かいところまで、注意や配慮をして見守りなさいよ。⑥それ以外にも事故を防ぐために気が付いたことがあれば、自主的に行動してね。」となります。簡単に言えば、「くれぐれも事故がないようにするのは親会社(特定元方事業者)の責任ですよ。」と、言っているのが労働安全衛生法の条文なのですね。だから、子会社(請負人)は、親会社(元方事業者)の言うことを聞かなければいけないのです。そのかわり、言うことを聞いていたのに、何か事故やトラブルがあった場合は、子会社(請負人)には、責任はない、と法律が守ってくれますので・・・。

そして、実際に現場で監督管理を行う人についても「名称」と共に役割が決められています。

会社としては親会社(元方事業者又は特定元方事業者)と子会社や孫会社(どちらも請負人と言います)に対して、人の名称は、「統括安全衛生責任者」「元方安全衛生管理者」「安全衛生責任者」の3種類の名称が今回の元方事業者と関係請負人の関係では必要となります。

もう一度考えてみましょう。親会社(元方事業者)だけで、作業や工事を全て完了できるのであれば、親会社(元方事業者)や子会社(請負人)という関係は出てこないはずです。自分の会社だけでは、完成できない部分があるから他の会社に作業を頼むわけです。
ということは、頼まれた子会社(請負人)の労働者と親会社(元方事業者)の労働者は、今回はたまたま同じ場所で作業をすることになったのですが、普段は違う場所で仕事をしているはずです。だから、普段から一緒に仕事をしている間柄ならば、「あうんの呼吸」と言いますが、少々、言葉での説明が足りなくても、うまくまわっていくことでも、違う会社の労働者同士では、1からきちんと説明や連絡しないと事故がおこる可能性も高くなります。だから、元方事業者という会社自体は全体の安全衛生面での責任を負うわけです。そして、実際の現場監督は「統括安全衛生責任者」といいます。
統括安全衛生責任者は、現場では、「現場監督」とか「現場主任」とか「親方」など色々な呼び名はあるとは思いますが、お役所に届け出るときには「統括安全衛生責任者」という名称で届けます。いわゆる工事現場の責任者です。工務店レベルでは、工務店長がなることが多いです。そして、現場の責任者という意味合いですので、いわゆる「ベテラン」「強面(こわもて)」などで、あれば良いので、実際の知識や技能がなくても、かまいません。実際に知識や技能が必要なのは「元方安全衛生管理者」という名称を持つ人です。また、子会社(請負人)側の現場責任者は「安全衛生責任者」という名称を持つ人です。

これでも、まだわかりにくいですね。具体的な例をあげて説明しましょう。
A建設会社が東京都からあるビルの建築を10億円で依頼されました。
A建設会社はB工務店に1億円で水回り関係を手伝ったもらうことにしました。
A建設会社はC工務店に2億円で電気関係を手伝ってもらうことにしました。
A建設会社はD工務店に1.5億円でガス関係を手伝ってもらうことにしました。
A建設会社はEインテリア会社に内装と外装を5,000万円で手伝ってもらうことにしました。

作業が始まりました。全体で流れを相談することにしました。この相談の場のことを「協議組織」といいます。協議組織には
A工務店からはAさんが「統括安全衛生責任者」として参加しました。
A工務店からはaさんが「元方安全衛生管理者」として参加しました。
B工務店からはBさんが「安全衛生責任者」として参加しました。
C工務店からはCさんが「安全衛生責任者」として参加しました。
D工務店からはDさんが「安全衛生責任者」として参加しました。
Eインテリア店からはEさんが「安全衛生責任者」として参加しました。

協議組織でAさんが「・・・という流れで、このビルを完成させたいと思います。皆さん、事故のないようによろしくお願いします。」と言いました。
残りのaBCDEの5人が「わかりました。」と答えました。
次の日からは、aさんがビルの基礎工事をするために、A建設会社の従業員(労働者)達と共にショベルカーやブルドーザーその他の重機なども利用して工事をすすめていっています。aさんは毎日の進捗(しんちょく)状況その他の細かい状況を、統括安全衛生責任者であるAさんに電話FAXメールなどを用いて、逐一報告しています。Aさんは東京都だけでなく、埼玉県、千葉県、神奈川県などの建築現場の「統括安全衛生責任者」を兼ねているので、東京都の建築現場には一週間に一回のペースでしかきていませんが、aさんからの細かい報告により、東京都の現場のことはよくわかっています。ただ、東京都の現場に来たときには、しっかりと作業場所の巡視をして、工事の進み具合や危険なことはないかトラブルなどはないか、などを自分の目で確認しています。そして、aさんの報告通りに工事が進んでいるのをみて、安心して別のところに行きました。何日か経ち、ビルの基礎工事が済み、各部屋についての作業に入る時期が来ました。B工務店がやってきて、水回りの工事をはじめます。B工務店がこの日にやってきたのは、統括安全衛生責任者のAさんから工務店の「安全衛生責任者」であるBさんに、「そろそろB工務店に作業をはじめてもらう時期が来ましたよ。」という連絡が入ったからです。そしてBさんもまた労働者達と作業を進めていった内容やトラブルその他を毎日逐一Aさんに電話FAXメールなどで逐一連絡しています。Aさんはあいかわらず一週間に一回のペースで東京都の現場に来て、Bさんの報告通りに作業が進んでいるのを確認して帰っていきました。しばらくすると、C工務店やD工務店、Eインテリア店なども同じように作業に入り、Aさんに進捗(しんちょく)状況その他を逐一報告しました。Aさんも相変わらず一週間に一回のペースで東京都の現場を巡視しました。後日、ビルは完成しました。BCDEの会社にはA建設会社から前渡し金を差し引いた残りのお金がそれぞれ払われました。メデタシメデタシ。

さて、この流れでは、「統括安全衛生責任者」であるAさんは現場にずっと常駐していませんでしたね。ただ、親会社の責任者として全体の流れやトラブルその他の状況をきちんと管理するだけですね。ですから、特別な技術や知識はいりません。しかし、「元方安全衛生管理者」のaさんや「安全衛生責任者」のBCDEさん達は、実際に現場で労働者と共に作業をしましたね。つまり常駐していました。だから、知識や特別な技術が必要ですね。もし、作業内容や機械の使い方がわかっていない、またトラブルや事故が起きた、という事例には現場責任者してすべて対応しなければいけませんからね。また、「元方安全衛生管理者」が1番大変ですね。子会社(請負人)の労働者が事故を起こさないように、トラブルが発生しないように、子会社(請負人)の「安全衛生責任者」や「労働者」に対しても、指導や指示をしなければいけませんね。

まとめると、工事が始まってから終わるまでずっと現場に張り付いていなければいけないのは「元方安全衛生管理者」のaさんです。BCDEさんは、自分の会社の担当の作業の時だけいれば良いのです(それ以外はいたら、かえって邪魔ですね)。Aさんは事務連絡をするために、来ることが出来る範囲で、現場に来ればよいだけなのです。現場の責任者は「元方安全衛生責任者」ですから・・・。
ですから「元方安全衛生責任者」だけ資格が必要です。
大学の理科系統又は高専あるいは高校や中学の理科系統を学んで卒業した者で建設工事の実務をこなした経験がないと「元方安全衛生責任者」に選任(選んで仕事を任せることです)できません。

というようなイメージを持って今回の問題文を読んでみましょう。

Aの問題文は上の具体的な例の通りですね。よって○(正答肢)となります。

Bの問題文は「指導や指示を直接行ってはならない」では元方事業者がすべての責任を負うことができませんね。責任があるからこそ、指導や指示をするのであって関係請負人の労働者も、その指導や指示をきかなけれはなりません。実務では、こういう指導や指示を聞かない請負人には仕事がまわってこなくなりますので、指導や指示をきかないことはすくないようです。よってBは×(今回の〔問 8〕の解答)となります。

CDEともに、この〔問 8〕の最初に解説した内容そのままですね。そうするに、親会社は子会社や孫会社の安全衛生についても責任を負う。責任を負うと言うことは、「あぶない」と思ったら、強制的にでも安全衛生に配慮する行動をしなさい、という内容であるかどうかで判断すると社会保険労務士試験の本試験での正誤は大丈夫だと思います。

結論として今回の〔問 8〕の解答は「B」となります。

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