第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 労働基準法及び労働安全衛生法 〔問 9〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 労働基準法及び労働安全衛生法 〔問 9〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説

労働基準法及び労働安全衛生法

〔問 9〕
労働安全衛生法に定める安全衛生管理体制及び労働者の就業に当たっての措置に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

A 常時50人以上の労働者を使用する製造業の事業者は、安全管理者を選任しなければならないが、安全管理者は労働安全コンサルタントのほか、第1種安全管理者免許又は安全工学安全管理者免許を有する者の中から選任しなければならない。

B 常時50人以上の労働者を使用する労働者派遣業の事業者は、衛生管理者を選任しなければならないが、衛生管理者は労働衛生コンサルタントのほか、大学、高等専門学校、高等学校又は中等教育学校(これらと同等と認められた一定の学校等を含む。)において理科系統の正規の学科を修めて卒業し、その後その学歴に応じて定められた一定の年数以上労働衛生の実務に従事した経験を有する者で、衛生に係る技術的事項を管理するのに必要な知識についての研修であって、厚生労働大臣が定めるものを修了したものの中から選任しなければならない。

C 常時50人以上の労働者を使用する建設業の事業者は、産業医を選任しなければならないが、産業医は労働衛生コンサルタント試験に合格した医師でその試験の区分が保健衛生である者のほか、産業医試験に合格し、免許を取得した者の中から選任しなければならない。

D 事業者は、高圧室内作業(潜函工法その他の圧気工法により、大気圧を超える気圧下の作業室又はシャフトの内部において行う作業に限る。)については作業主任者を選任しなければならないが、当該作業主任者は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う高圧室内作業主任者技能講習を修了した者でなければならない。

E 事業者は、作業床の高さが10メートル以上の高所作業車の運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務については一定の資格を有する者でなければ当該業務に就かせてはならないが、当該業務に就くことができる者は、都道府県労働局長の登録を受けた者が行う高所作業車運転技能講習を修了した者でなければならない。

皆様、こんにちは。今回の解説をはじめさせていただきます。

今回は、前回の第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 労働基準法及び労働安全衛生法 〔問 8〕のように複数の事業所(会社)が同じ場所で作業を行うから、指導や指示などの連絡をするように、という場合と違い、「単独での大きな事業所」での安全衛生管理についてわかっていますか?という問題ですね。

人数が多くなると、やはり事故は起きやすくなります。わかりやすく言えば、ある10人の小さな会社(事業所)で、一年間で事故が1回起こったとします。同じ割合で事故がおこると仮定すれば、1,000人の事業所では100倍の人数ですので、事故100倍となる一年間に100回事故がおきる割合となります。実際には、ここまでとはならないとは、思いますが、人が多くなればなるほど、色々な人が同じ会社(事業所)で働くので、より安全衛生面に配慮してくださいよ、というのが今回の問題の趣旨となります。

具体的には大規模事業場の安全管理体制としては「総括安全衛生管理者」「安全管理者」「衛生管理者」「産業医」という名前が出てきます。まず50人以上か50人未満かという基準で選任(選んで安全衛生管理を任せることです)するか否かが大きく違ってきます。
具体的に言えば、1つの場所で50人以上の労働者が常時働いている職場では「衛生責任者」を選任しなければなりません。あまり、事故が起きそうにない「銀行」などでも、○○銀行△△駅前支店内で常時働く人の数が50人以上ならば、「衛生責任者」を選任して、労働基準監督署長に「□□さんを衛生責任者に選任しました」と書類で届け出る必要があります。ここで、「衛生責任者」とは、何をする人なのでしょうか?衛生責任者とは、具体的には今回の銀行の場合は「支店長、当行の△△駅前支店は、二酸化炭素の濃度が高いようですね。このままでは、労働者の頭痛やその他の健康障害が起こることが予想されます。喚起を十分に行うことが出来るようにしてください。」「空気清浄機やエアコンの整備をお願いします。」などと、職場の「衛生(健康を守り、病気の予防をはかること)」面を管理することを職務とする人のことですね。ただ、あなたは次のように思うかも知れません。「たしかに、二酸化炭素濃度が高ければ、酸欠などで、頭痛やめまいその他の健康障害をおこすかもしれない。でも、オレには二酸化炭素濃度が高いかどうかなんてわからないなぁ。」その通りですね。衛生管理者となるには、「特別の知識や技術、いわゆる資格」が必要なのです。

労働安全衛生規則第7条や10条には、次のように規定されています。
「衛生管理者は、次の資格を有する者のうちから選任しなければならない。①都道府県労働局長から(1)第1種衛生管理者免許(2)第2種衛生管理者免許(3)衛生工学衛生管理者免許のいずれかを受けた者。②医師又は歯科医師③労働衛生コンサルタント④中学校、高等学校、大学校のいずれかの保健体育の先生」となっています。つまり、なんらかの「保健衛生」面での専門家でないとダメだということですね。また、実際に人体の衛生(健康を守り、病気の予防をはかること)にたずさわる職務ですから、保健衛生の専門家を衛生管理者に選任して、その職場の「衛生(健康を守り、病気の予防をはかること)」つまり「健康障害」を防止する。そして、その衛生管理者を選任するのは常時50人以上が働く職場(事業所)である、というのは納得できました。

では、「安全管理者」とは、何をする人のことですか?たとえば、さきほどの具体例での○○銀行△△駅前支店で常時働く労働者が100人だろうが、1,000人だろうが、10,000人だろうが(1つの銀行支店でこの人数は普通はありえませんが・・・)、「安全管理者」の選任は必要ありません。安全管理者とは「怪我や事故」が起こる可能性が高い業種で選任する必要があります。

具体的には、屋外で働く業種では常時50人以上の労働者が働いている場合には安全管理者を一人選任する必要があります。屋外的業種とは「林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業」のことです。屋外で車や機械を使っての作業が中心の業種であるとイメージしてください。

逆に屋内で仕事をするのですが、「ぎっくり腰などの腰痛」を引き起こす可能性がある業種の場合も、常時50人以上の労働者が働く場合に「安全管理者」を一人選任する必要があります。屋内での力仕事として「製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業」と指定されています。

イメージとして、「屋外で車や機械で仕事をする」「屋内で商品や製品、道具などでぎっくり腰になる可能性がある」業種は常時50人以上で「安全管理者」の選任が必要、としておけば大丈夫でしょう。なかには、銀行員でも銀行内で「大量の1万円札をはこんでぎっくり腰」という「ヘリクツ」を言う人もいるかもしれませんが、社会保険労務士試験に合格するためには、「一般的なイメージ」で考えてください。

では、安全管理者の具体的な職務なのですが、工場長に「今朝、工場内を見回ってたら、北のA階段の2階踊り場に大きなヒビ割れを発見しました。あのままでは、階段を上り下りしたりする人が落下したり、階段下の1階を歩いている人に、コンクリート片が落ちたりして、大けがをする可能性があります。至急、補修をしてください。」「Bラインの第2工程の機械の保護弁がゆるんでいましたので、応急措置をしました。しかし、あのままでは、事故が起こる可能性があります。至急補修または買い換えの手配をお願いします。」などということをします。作業場等を巡視し、設備、作業方法等に危険のおそれがあるときは、直ちに、その危険を防止するために必要な措置を講ずる人が「安全管理者」なのです。ですから、毎日作業場を巡視するので忙しいのです。そして「安全管理者」も「衛生管理者」同様に選任されるためには資格が必要です。「①(1)大学又は高専で理科系統の正規の課程を修めて卒業した者で、その後2年以上産業安全の実務に従事した経験を有する者(2)高等学校又は中等教育学校において理科系統の正規の学科を修めて卒業した者で、その後4年以上産業安全の実務に従事した経験を有する者のいずれかで厚生労働大臣の研修を終了すること。②労働安全コンサルタント③その他厚生労働大臣が定める者」となっています。

とにかく、作業所等の「危険防止」を職務とする人が「安全管理者」なのですね。

次に「産業医」があります。これは常時50人以上の労働者が働く職場(事業所)には、「産業医」を選任する必要があります。ただし、「安全管理者」や「衛生管理者」と違い、産業医の場合は、社員として雇う必要はありません。お医者さんを社員として雇うなんて、たかだか従業員が50人程度の事業所でやったら、人件費だけで「うわぁ~~やっていけないよぉ~」という状態になりますから、この場合の産業医というのは、外部の個人医院のお医者さんなどに、依頼して、「定期検診」として1年に1回か2回ほど会社(事業所)にきてもらって、「はい、口を大きくあけて、あ~ん。」「はい、服をまくって、聴診器で心音を確認しますよ。はい、背中向けて。」などをやってもらいます。また、月に一回程度、来てもらって、「健康相談」として、労働者の健康に関する不安などを聞いてもらったり、職場の環境が人体に悪影響を及ぼすかどうかを確認してもらったりします。あなたや私が卒業した小学校や中学校の「学校医」と同じようなイメージをしてくださいね。ふだんは、来ないから顔をわすれている、という感じですね。だから、お医者さんの中には、普段の自分の医院での業務の合間に、A社、B社、C社のというように掛け持ちでの産業医をすることも可能ですね。この産業医も資格として「産業医科大学卒業又は保健衛生をよく知っている医者」というような要件があります。

以上の「衛生管理者」「安全管理者」「産業医」の3種類の名称が常時50人以上の労働者がその職場(事業所)に働いているときに選任して、労働基準監督署長に届けでなければいけないものです。

ただ、常時働く労働者の数がもっと増えてくると「衛生管理者」「安全管理者」「産業医」人数なども変更されてきます。一人で担当するには労働者の数が多すぎると言うことですね。

まずも基本となるのはどのような業種でも常時50人以上で一人選任義務がある衛生管理者ですね。次のようになっています。

事業場の規模(常時使用労働者数)選任する衛生管理者数
50人以上200人以下1人以上
200人を超え500人以下2人以上
500人を超え1,000人以下3人以上
1,000人を超え2,000人以下4人以上
2,000人を超え3,000人以下5人以上
3,000人を超える場合6人以上

本当に巨大な工場などの場合は衛生管理者が6人以上必要となるのですね。

「安全管理者」については、その職場に専任(かけもちでなく、その仕事だけを担当すること)という縛り以外は、人数に関するしばりはありません。やはり「安全管理者」の仕事だけに専念させるからですね。しかし、実情としては、やはり3,000人なとどいう巨大な工場などでは複数の「安全管理者」を配置しているところも多くあります。

「産業医」に関しては、①常時1,000人以上の労働者を使用する事業場②有害業務に常時500人以上の労働者を従事させる事業場、の2つの場合は「専属の産業医」として専任しなければならない、とされています。この「専属の産業医」とは、「社員としておかかえの産業医」のことです。つまり、その会社の医務室には常にお医者さんがいる状態です。ここまで、社員が多いのならば、産業医も常駐させる必要があるとされています。また、ここまで従業員が多い企業であれば、産業医を雇うお金ぐらい出るだろうという考えもあるようです。

さて、ここまで「衛生管理者」「安全管理者」「産業医」の人数などにつても、見てきました。

常時50人程度の労働者であれば、「衛生管理者」1人と、「安全管理者」1人と、月1で来る「産業医」でまかなえますので、労働者達も何か困ったことがあれば、「安全管理者」または「衛生管理者」のどちらかに相談をすれば良かったのです。また、全体が50人程度の事業所であれば、安全衛生面での相談件数もそれほど多くなく、安全管理者や衛生管理者単独での判断でも大きな問題はおこらないでしょう。しかし、労働者数がもっともっと増えてくると、色々なことがからみあって、また安全管理者や衛生管理者も増えて、全体の統制が取りにくくなってきます。そこで安全衛生面での全体の責任者として、総括安全衛生管理者という名称の管理者をおくようになったのです。実質的には、今まで「工場長」「支社長」などと呼ばれていた人がそのまま名称を変えているだけです。それまでも、「工場長」「支社長」として、職場の安全衛生につとめてきたことでしょう。しかし、「総括安全衛生管理者」として文書で労働基準監督署長に正式に届け出て、安全衛生面でトラブルがあれば「責任を取る」というはっきりとした「しばり」があれば、より安全衛生面での潜在的な向上が期待できるだろうという意味合い(ねらい)もあります。具体的には屋外的作業の「林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業」では常時100名以上、屋内的作業の「製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業」は常時300人以上、その他の業種は常時1,000人以上の労働者を使用する場合は、「総括安全衛生管理者」の専任義務が発生します。普通は、1,000人以上という大きな事業所でしか「総括安全衛生管理者」を専任しなくても良いのですが、危険な業種、つまり「安全管理者」を選任する必要がある業種に関しては、比較的少ない労働者数でも「総括安全衛生管理者」という名称で選任する必要があるとイメージしてください。ただ、仕事としては、「安全管理者」「衛生管理者」などに安全衛生面での指揮をして、自分自身は「事務的」に安全衛生面での裏方に徹するのです。だから、特別な知識や技能はいりません。まるで、〔問8〕に勉強した「統括安全衛生責任者」のようなものだと思ってもらえば結構です。

以上のイメージを頭に入れて、今回の〔問 9〕の問題文を見てみましょう。

Aの問題文は、列挙されている者以外にも大学や高校の理科系統の課程を終えて実務を積んで、厚生労働大臣の研修をうけた者もありましたね。よってAは×(誤答肢)となります。

Bの問題文は、医師や歯科医師、学校の保健体育の先生、衛生管理者の免許保持者などもありましたね。よってBは×(誤答肢)となります。

これらのAやBの問題文ではすべての内容を覚えていなくても良いのです。私ならば、Aは「大学理科系統」、Bは「医者」がそれぞれぬけてるやん、という理由で×にします。今の時点でわからなければ、過去問をやれば良いのです。過去問をつぶしていけば、実際に社会保険労務士試験本試験で出てくるところは、案外限られていることがわかってはきます。

Cの問題文は、私ならば「産業医科大学がない」として×にします。正式には「厚生労働大臣の指定する者、産業医科大学卒業者その他の大学で厚生労働大臣が指定する課程と実習を履修した者」となります。よってCは×(誤答肢)となります。

DとEはまた違う範囲ですね。まず「作業主任者」についてご説明します。
作業主任者とは「事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者(登録教習期間)が行う技能講習を終了した者のうちから、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。」と労働安全衛生法第14場にあります。ここで、社会保険労務士試験に出てくる「ひっかけ」は「免許か終了か」というものです。これは「高圧室内作業・ガス溶接作業・エックス線作業」の3つだけ「免許」で、それ以外は「技能講習修了」と覚えてください。私は「高圧ガスを掛け合わせるのは免許必要」「高圧ガスはかけあわせ」という勝手なゴロ合わせで覚えました。「高圧(室内作業)とガス(溶接作業)を掛け合わせる(Xエックス線)の3つは免許だよ」というのを「高圧ガスはかけあわせ」としたのです。X(エックス)という記号を×(かける)というように読みかえて覚えたのです。そして、これ以外のたくさんある種類はすべて、技能講習修了で作業主任者となる資格を獲得できる、と覚えたのです。理論的には無茶苦茶な覚え方でごめんなさい。

Dの問題文は「高圧室内作業」は免許制なのに、「・・技能講習修了」とあるので×(誤答肢)となります。

Eは就業制限の区別を知っていますか?という問題です。さきほどのDの作業主任者は何人か集まって作業する場合の監督さんのことですが、今回のEの問題文は、自家用車を運転するのには「普通自動車運転免許」が必要なのと同じように何かの機械を操作するときの資格が何か知っていますか?という問題です。これは本当にたくさんの種類がありますので、すべて覚えきることは「無理」です。ですから、「これならこうだ」というイメージで覚えてください。「発破・ボイラーなどの爆発する可能性があるものは免許」「5トン以上の大きなクレーンは免許」「それ以外は技能講習修了」というように、危険だと思ったら「免許」にしてください。今回の危険かどうかの判断は自分だけでなく他人にも危険を及ぼすという考え方です。「爆発する可能性は近くの人が吹っ飛びます」「5トン以上のクレーンの場合は、酒屋のおじちゃんがせいぜい100キロや200㎏という何箱かの酒や麦酒が乗ったフォークリフトを1人で動かすのとは違って、操作を間違えると思いっきりクレーン自体がひっくりかえる可能性があります。運転手が下敷きになればすごく危険です。」などというように、社会保険労務士試験で「どっちだったっけ」と迷わないためにも、危険かどうかのイメージを過去問でするように練習してください。Eの問題文は「リフト車」のことですね。電線の上で電気会社の人が作業をするときに、1人だけ乗せたゴンドラを電柱の上の方まであげたり下げたりする作業ですね。大きな車に対して人が1人のったゴンドラを上げ下げするくらいでは5トンクレーンのように持ち上げている荷物の反動で横に倒れたり、ひっくり返ったりする可能性は小さいから危険性はすくないです。だから、「免許ではなく技能講習修了でOK」と私は判断します。こういう微妙な判断がいやであれば、社会保険労務士試験の試験範囲には50以上ある色々な免許や技能講習を覚えるべきですが、私は時間と効率のことを考えると、頭の中の暗記物にわりあてるキャパシティ(許容量)をここでつかうのはもったいない、と判断します。「危険は免許」「危険でなければ技能講習修了で良い」として、あとは過去問を解いて「正解を導く国語力」をつけていく練習をしたほうがかしこいと、個人的に思っています。よって、Eは危険度がすくないので技能講習でOKとなり、○(今回の解答)となります。

結論として、今回の〔問 9〕の解答は「E」となります。

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