第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 労働基準法及び労働安全衛生法 〔問 10〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 労働基準法及び労働安全衛生法 〔問 10〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説

労働基準法及び労働安全衛生法

〔問 10〕 労働安全衛生法に定める安全衛生教育に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

A 事業者は、労働者を雇い入れたときは、労働安全衛生規則に定める事項について安全衛生教育を行わなければならないが、業種が燃料小売業である場合は、雇い入れた労働者すべてを対象として、①機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること、②安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること、③作業手順に関すること、④作業開始時の点検に関することについては安全衛生教育を省略することができる。

B 事業者は、労働者の作業内容を変更したときは、労働安全衛生規則に定める事項について安全衛生教育を行わなければならないが、当該事項の全部に関し十分な知識及び技能を有していると認められる労働者であっても、その全部の事項についての安全衛生教育を省略することはできない。

C 事業者は、廃棄物の焼却施設に設置された廃棄物焼却炉の設備の保守点検等の業務に労働者を就かせるときは、労働安全衛生規則第592条の7に規定する科目について特別の安全衛生教育を行わなければならないが、当該科目の一部について十分な知識及び技能を有していると認められる労働者であっても、その科目についての特別の安全衛生教育を省略することはできない。

D 事業者は、建設用リフトの運転の業務に労働者を就かせるときは、その業務に関する特別の安全衛生教育を行わなければならないが、その業務に関する特別の安全衛生教育を行ったときは、当該教育の受講者、科目等の記録を作成して、3年間保存しておかなければならない。

E 運送業の事業者は、新たに職務に就く職長に対して、作業方法の決定及び労働者の配置に関すること、労働者に対する指導又は監督の方法に関すること等について安全衛生教育を行わなければならない。

皆様、こんにちは。本日の解説をはじめさせていただきます。

今回は安全衛生教育についてわかっていますか?という問題です。「安全衛生教育」も苦手意識を持っている受験生がいますね。あなたは安全衛生教育について説明してください、と言われたらどうしますか?私ならば、次のように答えます。

「安全衛生教育」とは3種類あります。 1、雇入れ時・作業内容変更時の教育 2、特別教育 3、職長教育

危険有害な環境や作業内容に従事しない一般社員には、「雇入れ時・作業内容変更時の教育」だけでかまいません。もちろん、その会社にあるすべての安全衛生教育をしても良いのですが、関係ないような細かいところまで、時間をかけて説明したとしても、はっきりいって、一般社員の方にも「どうせ、退職するまで使わないのになぁ、てきとうに聞いとこぉ~」という意識をもたれるぐらいならば、やらないほうが良いのかも知れません。

また、危険有害な働き方をする労働者に関しては、「特別な教育」としての「特別教育」が必要となります。「危険有害」とは「身体にとって危険な作業や身体にとって衛生面で有害な環境」で働くということになります。具体的には「腰痛になるほどの重量物を人力で運ぶ作業や危険な機械の操作や崖崩れなどが起きる可能性のあるところでの作業」は危険な作業の一例であり、「話題になっている石綿その他の粉塵(ふんじん)が空気中に含まれる場所や有害ガスや二酸化炭素濃度が高くなっている工場内での製品の箱詰め」などが衛生面で有害な環境となっています。一般的に危険な作業では、比較的短期間に身体に対する異常(腰痛や怪我など)が発生し、衛生面で有害な環境では潜伏期間が比較的長いので、衛生面での注意が軽視されがちですが、今は「危険有害」な働き方をする労働者にとっては、「特別教育」が必要とされています。

最後の「職長教育」とは、その職場の「主任」「課長」など、何人かの労働者の指揮監督的な立場にある人で、「新入社員に雇入れ時の教育」や「配置転換であたらしく同じチームになった人に対して作業内容変更時の教育」、また「危険有害な働き方をする人に特別教育」などを指導する立場の人です。そういう人に対して、表からも裏からも「安全衛生」面でのエキスパート(指導者)となるように、「職長教育」をする必要があります。

以上で、安全衛生教育の3種類は「なぜ必要なのか」「どのような時に必要なのか」はわかってもらえたのではないかと思います。

次に中身についてご説明しましょう。 1、雇入れ時・作業内容変更時の教育とは、 ①機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取り扱い方法に関すること。 ②安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取り扱い方法に関すること。 ③作業手順に関すること ④作業開始時の点検に関すること。 ⑤当該業務に関して発生するおそれのある疾病(しっぺい)の原因及び予防に関すること。 ⑥整理、整頓及び清潔の保持に関すること。 ⑦事故時等における応急措置及び退避に関すること。 ⑧その他当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項。 の8項目です。とはいっても、この8項目を丸暗記するのは私も無理です。たとえば、朝、職場に来て準備をしてから、仕事をはじめ、夕方仕事が終わって後かたづけをして帰宅するまでに、「危険有害」な状況にならないように注意して行動する、と覚えておいてください。前記の①~⑧は結局そういう内容ですから・・・。ただ、①~⑧の内容はどのような職場で働く人でも当てはまりそうな一般的なことを言っているだけです。ただ、法律の言い方ですから、堅い表現になさっているので少しとっつきにくいだけですが、①~⑧までを1つずつ読みながら、あなたやあなたの周りの職場にあてはめてみると、案外あてはまることが多いのではないでしょうか。

そして、銀行などの事務労働が主体である業種に関しては危険な作業、有害な環境で働く可能性が低いということで、上記の①~⑧のうち、前半の①~④は省略できる、とされています。つまり、銀行などの事務労働に従事する人は、⑤風邪などをひかないように⑥整理整頓して⑦火事などが起きたときの避難経路の確認をして⑧普段から落ち着いた行動をしなさいよ、と仕事に限らず、一般の大人の常識みたいなものを持っていれば良いというイメージですね。それにたいして、①~④は現場作業での①機械やトルエンなどの扱いは気を付けて②ブレーカー、空気清浄機、ヘルメットなどはきちんと確認して③仕事の順番を間違えないで④はじめに右向いて左向いて職場が異常ないかを確かめて、というようにまさに今から身体を使って働くぞぅ、というような内容ですね。

2、特別教育とは「事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定める者に労働者をつかせるときは、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行わなければならない。」という労働安全衛生法第59条3項に規定があります。この特別教育が必要な業務は49業務もありますが、社会保険労務士試験によく出題される内容は次の12業務です。 (1)小型ボイラー取り扱いの業務 (2)つり上げ荷重が5トン未満のクレーン若しくはデリック又はつり上げ荷重が5トン未満の跨線テルハ(こせんテルハと読みます)の運転業務 (3)つり上げ荷重が1トン未満の移動式クレーンの運転(道路上の走行運転を除く)業務 (4)つり上げ荷重が1トン未満のクレーン、移動式クレーン又はデリックの玉掛けの業務 (5)建設用リフトの運転又はゴンドラの操作の業務 (6)最大荷重1トン未満のフォークリフト、ショベルローダー、フォークローダーの運転(道路上の走行運転を除く)業務 (7)最大積載量1トン未満の不整地運搬車の運転(道路上の走行運転を除く)業務 (8)動力により駆動されるプレス機械の金型、安全装置の取付け、取外し又は調整の業務 (9)アーク溶接機を用いて行う金属の溶接、溶断等の業務 (10)酸素欠乏危険場所における作業に係る業務 (11)研削といしの取替え又は取替え時の試運転の業務 (12)石綿等が使用されている建築物又は工作物の解体等の作業に係る業務

の12種類が社会保険労務士試験によく出題されます。

しかし、今きっちりと覚える必要はありません。何回も過去問をやるうちに、ある程度見分けがつくようになります。考え方としては、クレーンなどでも5トン以上であれば、作業主任者の免許が必要ですが、5トン未満というように、作業主任者の「免許」までは必要ではないが、それでも、危険な作業をともなうから、より注意喚起としての「特別教育」で、使い方やトラブルが起こったときの対処に仕方などを教える必要があるものなのだ、というイメージで試験は解けます。

3、職長教育とは、「事業者は、その事業場の業種が政令で定める者に該当するときは、新たに職務につくことになった職長その他の作業中の労働者を直接指導又は監督する者(作業主任者を除く。)に対し、次の事項について、安全又は衛生のための教育を行わなければならない。 ①作業方法の決定及び労働者の配置に関すること。 ②労働者に対する指導又は監督の方法に関すること。 ③前2号(上記①②)に掲げるもののほか、労働災害を防止するため必要な事項で、厚生労働省令で定めるもの。」という労働安全衛生法第60条に規定されています。

具体的には、 労働安全衛生法施行令第19条(職長等の教育を行なうべき業種)は以下のとおりである。

①建設業 ②製造業 ただし、次に掲げるものを除く。  (1)食料品・たばこ製造業(化学調味料製造及び動植物油脂製造業を除く。)  (2)繊維工業(紡績業及び染色整理業を除く。)  (3)衣服その他の繊維製品製造業  (4)紙加工品製造業(セロファン製造業を除く。)  (5)新聞業、出版業、製本業及び印刷物加工業 ③電気業 ④ガス業 ⑤自動車整備業 ⑥機械修理業 すべて覚えるのは困難ですから、職長教育が必要な業種は人間よりも大きな物を作る①②、人が触れると危険③④、機械の修理⑤⑥ということで「大きな危険の修理6種類」が職長教育必要とイメージしてください。

そして、教育内容は

製造業(一部業種を除く)、建設業、電気業、ガス業、自動車整備業、機械修理業の各事業者は、作業中の労働者を直接指導または監督する者(作業主任者を除く)に対して、次の事項について、厚生労働省の定めるところにより、安全または衛生のための教育を行わなければなりません。(安衛法第60条、同施行令19条、安衛則第40条) ① 作業方法の決定及び労働者の配置(2時間)  1作業手順の定め方  2労働者の適正な配置の方法 ② 労働者に対する指導または監督の方法(2時間30分) 1指導および教育の方法 2作業中における監督および指示の方法 ③ 危険性または有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置(4時間) 1危険性又は有害性等の調査の方法 2危険性又は有害性等の調査の結果に基づき講ずる措置 3設備、作業等の具体的な改善の方法 ④ 異常時等における措置(1時間30分) 1異常時における措置 2災害発生時における措置 ⑤ その他現場監督者として行うべき労働災害防止活動(2時間) 1作業に係る設備及び作業場所の保守管理の方法 2労働災害防止についての関心の保持及び労働者の創意工夫を引き出す方法 本講習会は、職長の業務につくことになった方々に、定められた安全または衛生のための教育を行うものです。   となっています。社会保険労務士試験に対する覚え方としては、作業主任者ほどの知識や技能は必要ないけれども、その職場の他の従業員に対して指導や指示ができる程度のレベルになるような教育をうけることが職長教育とイメージしてください。

今までにここのまでの内容を全く知らなかったという社会保険労務士試験受験生の方は、ここまでの内容を一度印刷して何回か読んで頂くだけでも、今後似たような問題が出てきたときに、全くはじめての状態よりは問題を解く上でのイメージがつくりやすくなるのではないでしょうか。

以上のイメージを元に今回の〔問 10〕の問題文を見てみましょう。

Aの問題文は「・・・燃料小売業である場合は、・・・①・・・②・・・③・・・④・・・については安全衛生教育を省略することができる。」とありますが、さきほどの解説にもあるように、前半の現場作業的な安全衛生教育を省略できるのは「事務的」な仕事、例えば銀行などの仕事となります。よってAは×(誤答肢)となります。

Bの問題文は「十分な知識及び技能を有している・・・省略することはできない。」とありますが、安全衛生教育は何のために行うのでしょう。事故やトラブルが起きないように事前に知識や技能を教えるために行うものてすね。ですから、まったく同じ種類の業種からの転職組などで、明らかに十分な知識及び技能を有していると認められる労働者に関しては、その「認められる」部分に関しては「全て」省略しても問題はないですね。よって、Bは×(誤答肢)となります。

Cの問題文は、Bと同じく「十分な知識及び技能を有している」ならば省略してもかまいませんね。よってCは×(誤答肢)となります。

Dの問題文は、労働基準法でも説明しましたが、労働保険に関しては、保存期間は一律3年と思いこんでください。それで社会保険労務士試験はOKです。よってDは○(今回の〔問 10〕の解答)となります。

Eの問題文は「運送業」は「大きく危険な修理」に入っていませんね。よってEは×(誤答肢)となります。

結論として今回の〔問 10〕の解答は「D」となります。

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