第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 労働者災害補償保険法 〔問 1〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 労働者災害補償保険法 〔問 1〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説

労働者災害補償保険法

〔問 1〕
労働者災害補償保険の保険給付に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。なお、以下において、「労災保険」とは「労働者災害補償保険」のこと、「労災保険法」とは「労働者災害補償保険法」のこと、「労災保険法施行規則」とは「労働者災害補償保険法施行規則」のことである。

A 労災保険の保険給付は、業務災害に対する迅速公正な保護だけでなく、通勤災害に対しても同様な保護をするために行われるものであるが、通勤災害に関しては、業務災害に係る介護補償給付に対応する保険給付は定められていない。

B 労災保険の保険給付のうち、業務災害に関する保険給付は、労働基準法に規定する災害補償の事由が生じた場合にのみ行われるのであって、その種類は、給付を受けるべき者の請求に基づく療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付、葬祭料及び介護補償給付に限られる。

C 偽りその他不正の手段により労災保険の保険給付を受けた者がある場合において、その保険給付が事業主の虚偽の報告又は証明をしたために行われたものであるときは、保険給付を受けた者ではなく事業主が、その保険給付に要した費用に相当する金額の全部を政府に返還しなければならない。

D 一人親方等の特別加入者のうち、漁船による水産動植物の採捕の事業を労働者を使用しないで行うことを常態とする者は、自宅から漁港までの移動が通勤とみなされ、通勤災害に関しても労災保険の適用を受けることができる。

E 遺族補償給付を受ける権利を有する同順位者が2人以上ある場合の遺族補償給付の額は、遺族補償年金にあっては労災保険法別表第1に規定する額を、遺族補償一時金にあっては同法別表第2に規定する額を、それぞれ同順位者の人数で除して得た額となる。

皆様、こんにちは。今回の解説をはじめさせていただきます。

まず、労働者災害補償保険法について簡単にイメージを持っておきましょう。労働者災害補償保険法とは何ですか?と聞かれたらあなたはどのように答えますか。私は、次のように答えます。法律の目的とはその法律の第1条に書いてあることが多いです。労働者災害補償保険法第1条は、「①労働者災害補償保険は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、死亡等に関して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかった労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もって労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。②労働者災害補償保険は、上記①の目的を達成するため、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、傷害、死亡等に関して保険給付を行うほか、社会復帰促進等事業を行うことができる。」とあります。

労働基準法の災害補償は「労働」つまり「使用者の指揮命令下」にある状態中に事故にあったり病気になったり場合に、使用者に賠償責任を義務づけています。しかし、実際の現場では、それが業務上(使用者の指揮命令下)にあったのか否かの判断が難しい場合があります。たとえば、出張中や昼休みの事故などです。また、あきらかに、使用者の指揮命令下での事故であっても、中小企業では使用者側に支払い能力がなかったり、実際にお金が支払われるまでに長い時間が要するなどの現実的な問題が数多くあります。また、それが使用者側に責任があると労働者側が主張しても、使用者側が「いや、労働者側の自己責任での事故で、使用者側が悪くない」と反論した場合は、「裁判」になることもありますが、裁判になった場合は、1年や2年以内に判決が出る事例の方が圧倒的に少なく、社会的弱者側である労働者は、せっかく労働基準法第75条で「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。」と規定されていても、「絵に描いた餅」状態で、実際には労働基準法第75条は本当にお金や補償が必要なときには間に合わないから実務上は「使えない」というのが現実です。また、職場までの行き帰りの通勤での事故や疾病などは、仕事をするために移動中の事故や疾病なのに、一円も補償されません。なんか労働者はかわいそうですね。というような趣旨の考えで、「労働者災害補償保険法」は、その名前の通り「労働者が災害にあった場合は全て補償しましょう」という法律です。もっと具体的に言えば、「労働者=使用者に使用されている人、現実に給料をもらっていなくても、契約したらその瞬間から」が、「仕事に関係のある怪我や病気や障害や死亡は理由は問わずに全ての場合」で、「療養もその間の生活費となるお金も全て」、補償してあげましょう、というものです。そういえば、昭和という時代に私の友人が労災事故で足を骨折したときに、数ヶ月の間、松葉杖をつきながら、毎日パチンコや麻雀屋に入り浸っているのを見て、私がうらやましく思ったことがあります。もちろん、パチンコや麻雀で遊ぶお金も労働者災害補償保険法から出ていたのですね。日本にある保険の中で「労働者災害補償保険法」が1番労働者にとって、有利で素晴らしい保険です、というイメージで社会保険労務士試験問題に取り組むようにすると問題がとっつきやすくなると思います。なぜならば、労働者側は、絶対に一円も負担せずに、生活の面倒まで見てもらえる保険ですから・・・。
では、具体的な中身について触れていきましょう。

労働者災害補償保険法は、労働基準法の災害補償で考えられる不備を全てカバーすることを目的としてつくられた法律です。

(1)労働者の負担はないということは、保険料は使用者だけが払います。
(2)しかし、使用者しか払わないので、実際に労災事故が起こった場合は、使用者も事故の責任を一切問われることなく、保険金を国から払ってもらえますので、万が一のことを考えたら大きなメリットがあります。実際に大きな事故ならば、1人の労働者に対して1,000万円以上のお金を払わなければならない場合もでてくる可能性もあるのですが、100人の労働者だろうが、1万人の労働者だろうが、普段のわずかな掛金ですべて国が払ってくれるので、使用者側にも大きな安心感というメリットがあります。
(3)そして、いざ、労災事故が起これば迅速丁寧にお金が国から支払われるので、労働者側は一円の負担もせずに済みます。労働基準法ならば、いったん労働者が100万円払って、あとで、還付されるという場合もあるのですが、労働者災害補償保険法ならば、最初に払うべき100万円も国がその場で払ってくれるという流れになってます。

そういうように、「労働者災害補償保険法」は素晴らしい保険なのだというイメージを持っていれば、社会保険労務士試験に関する本試験問題はかなり解きやすくなります。ただし、社会保険労務士試験は「落とす」試験なので、「いやらしいひっかけ問題」が今までにも多数出てきています。しかし、労働者災害補償保険法は過去問をやって「国語力」を身につけておけば、かなり正答が自分の考えで導き出すことが可能な科目です。ぜひとも、あなたの得意科目、つまり得点源となる科目にしてください。

では、具体的な問題を見てみましょう。

〔問 1〕

Aの問題文は「労働者災害補償保険法第7条第1項第2号の通勤災害に関する保険給付は、次に掲げる保険給付とする。①療養給付②休業給付③障害給付④遺族給付⑤葬祭給付⑥傷病年金⑦介護給付」という労働者災害補償保険法第21条について問いかけてきている問題です。Aの問題文に関しては「介護給付」がありますので、×(誤答肢)となります。

ただ、のちのちのことがあるので、労働者災害補償保険法の保険給付についてイメージしておきましょう。

労働者災害補償保険法の保険給付は、
①労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡(以下「業務災害」という。)に関する保険給付。
②労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡(以下「通勤災害」という。)に関する盆給付。
③二次健康診断等給付
の3種類あります。

①の業務災害に関する保険給付は
(1)療養補償給付
(2)休業補償給付
(3)障害補償給付
(4)遺族補償給付
(5)葬祭料
(6)傷病補償年金
(7)介護補償給付
の7種類あります。
イメージをご紹介すると、
Aさんがある日、工場内での作業中に大けがをしました。すぐに救急車で労災病院に運ばれました。労災病院までの救急車の費用や労災病院での診察代、治療代、手術台、薬代、食費などは全て療養補償給付として国から直接労災病院に払われますので、Aさんは、「痛いのは我慢しなければなりません」が、病院にかかるお金の面での心配は一切しなくて宵のです。これが(1)の療養補償給付となります。

 しかし、Aさんも、入院生活が長くなり、病院内を少し歩くことができるようになりました。すると、マンガや小説を病院内の売店で買って読みたくなりました。また、Aさんには、妻や子どももいます。Aさんが入院している間は、働けないので、給料が出ません。Aさんが病院内で、治療に関係のないマンガや小説を買ったり、妻や子どもが生活するための「生活費」はどうなるのでしょうか。このお金も国から出ます。それが(2)の休業補償給付となります。

Aさんが事故にあった日に労災病院にかつぎこまれて、1年と6ヶ月が経ちました。しかし、Aさんは、精神に著しい障害を有した状態でまだ治癒(病気・けがなどが治ること)していません。このときのAさんの状態は労働者災害補償保険法での障害等級1級の状態でした。Aさんの普段の収入は「休業補償給付」から額が多い「傷病補償年金」に切り替えられました。これが(6)の傷病補償年金となります。もちろん、傷病補償年金は、「生活費」としてのお金ですから、病院にかかる費用は「療養補償給付」としてもらい続けますので、病院関係に払うお金は0円のままです。そして、休業補償給付が額の多い傷病補償年金に切り替わったわけですから、今後は休業補償給付はもらいません。今までの「療養補償給付(治療費)+休業補償給付(生活費)」が「療養補償給付(治療費)+傷病補償年金(より多い生活費)」に切り替わっただけです。

Aさんが事故にあった日から三年が過ぎ、やっと治癒しました。しかし、この治癒というのは、Aさんの状態がもう固定して、それ以上変化しないという意味での治癒です。結果としてAさんはもう病院に行かなくて良いようになりました。そして、Aさんは障害等級1級の障害状態で固定すると診断されました。今後Aさんは、治癒したので傷病補償年金ではなく障害補償年金を障害状態が継続する限り、死ぬまでもらい続けることになります。そして、障害補償年金には税金は一切かかりません。生活費としてもらうのが(3)の障害補償給付としての障害補償年金です。この治癒したときに障害等級が低ければ、一時金としての障害補償一時金という現金でもらうことになります。

そして、今回のAさんの場合は障害等級1級で、普段の日常生活でも常時又は随時の介護を必要とする状態です。つまり、誰か横で介護という面で助けてくれる人を頼んだ場合に104,730円を限度額として支給してもらうのが(7)の介護補償給付です。

ただ、労災事故の場合は、事故があってすぐであっても、時間をおいてでも、その労働者が死ぬ場合もあります。死んだ場合は、お葬式関係の費用として(5)の葬祭料という名目で315,000円+給付基礎日額30日分または給付基礎日額の60日分の多い額が、お葬式を行う者に支給されます。

そして、労働者が死んだ時に、死んだ労働者の妻又は55歳以上の夫、55歳以上の父母、55歳以上の祖父母、18歳に達する日後の最初の3月31日までにある子、18歳に達する日後の最初の3月31日までにある孫、18歳に達する日後の最初の3月31日までにある又は55歳以上である兄弟姉妹という遺族は(4)の遺族補償給付である遺族補償年金又は遺族補償一時金をもらえます。また、労働者が死んだときに、遺族が障害等級5級以上の障害の状態にあるときは、年齢要件は関係なしに遺族補償給付がもらえます。

以上が業務災害に関する保険給付です。

ここまでのイメージに関しても今まで全く知らなかったという社会保険労務士試験受験生はここまでの内容を印刷して何回か読んでおくと良いのかもしれません。

次に通勤災害に関する保険給付も、業務災害に関する保険給付と同じようなものだと考えてください。違いとしては、まず、名称が違います。業務災害に関しては、労働基準法での災害補償を労働者災害補償保険法で、より迅速に実行しましょう、という趣旨で保険給付の中に「補償」という名称が入っています。お葬式だけその場だけの一時金しかないので「葬祭料」として「補償」という単語は入りません。
通勤災害に関しては、労働者災害補償保険法独自での保険給付ですので労働基準法をうけての「補償」ではありませんから、補償という言葉はありません。
だから、
(1)療養補償給付→療養給付
(2)休業補償給付→休業給付
(3)障害補償給付→障害給付
(4)遺族補償給付→遺族給付
(5)葬祭料 →葬祭給付
(6)傷病補償年金→傷病年金
(7)介護補償給付→介護給付
というように原則として業務災害の保険給付の名称から「補償」という単語を抜いただけになります。唯一の例外として業務災害での「葬祭料」だけは抜く言葉がない&区別を付ける必要性により、他の通勤災害の保険給付の名称とのバランスを考えて「葬祭給付」という名称になっていることに注意してください。「葬祭料」と「葬祭給付」でのひっかけ問題が過去の社会保険労務士試験の本試験で何回か出題されています。そして今後も出題される可能性が高いと私は思っています。そして、それぞれの通勤災害の保険給付の内容は、業務災害での保険給付の内容と同じだと考えてください。

最後に「二次健康診断等給付」という名称の保険給付は、定期健康診断等において、業務上の脳血管疾患及び心臓疾患についての検査が行われた場合で、そのいずれの項目にも異常所見があると診断されたときに、当該労働者の請求に基づき健康診断及び保険指導を行う者である、とされています。

次にBの問題文は、7種類と覚えていなくても、さきほどのAさんの例で頭に考えてください。事故が起こって労災病院に入院したら「療養補償給付と休業補償給付」がもらえる。一年6ヶ月後に治っていなくて障害等級の状態ならば「傷病補償年金」がもらえる。その後治癒つまり症状が固定しても障害状態ならば「障害補償給付」がもらえる。障害が重ければ介護してもらうための「介護補償給付」がもらえる。労働者が死んだときはお葬式代の「葬祭料」と残された遺族に「遺族補償給付」での7種類が、さきほどのAさんの例を頭にイメージできていたらスラスラと出てきましたね。Bの問題文は「傷病補償年金」がないですね。よってBは×(誤答肢)となります。

Cの問題文は「①偽りその他の不正の手段により保険給付を受けた者があるときは、政府は、その保険給付に要した費用に相当する金額の全部又は一部をその者から聴取することかできる。②前項(上記①)の場合において、事業主が虚偽の報告又は証明をしたためその保険給付が行われたものであるときは、政府は、その事業主に対し、保険給付を受けた者と連対して前項(上記①)の徴収金を納付すべきことを命ずることができる。」という労働者災害補償保険法第12条の3,1項、2項について問いかけてきている問題です。Cの問題文はあきらかに条文とは違うので×(誤答肢)なのですが、今回の条文をしらなくても「国語力」で問題を解くことができます。考え方として返還できる保険給付は「お金」です。社会保険労務士試験に出てくる全ての問題で「お金」を、お役所側(国や都道府県、市町村など)が返還せよ、と国民に行ってくる場合は、返還を「命ずる」や「請求」など色々な言い方をしたとしても末尾は「できる」となります。なぜならば、返還したくても、「できない」事情も考えられるので、たとえば「サラ金から借りてでも返還せよ。あとは、取り立てであなたが自殺しようがお役所側は知ったこっちゃない」というような、「強制」敵にお金を取り立てることはできません。ですから「できる」という言い方になるとイメージしてください。よってCの末尾は「ならない」となっていますので、×(誤答肢)と判断できます。

Dの問題文は「漁船による水産動植物の採補の事業に従事する1人親方等は、住居と就業の場所との間の往復等の移動の実態が不明確なので、通勤災害が適用されない」という労働者災害補償保険法施行規則第46条22の2について問いかけてきている問題です。Dの問題文は「できる」としていますので、×(誤答肢)となりますね。イメージとして1人親方とは個人事業です。個人事業では通勤の定義としての「どこまでが自宅」で「どこまでが職場」かわからない場合がありますね。例えば、個人タクシーの運転手さんは自宅のガレージに駐車場を置いている場合は、家の勝手口のドアを開けたらタクシーが目の前にあったということになり、「通勤」とは、言えませんね。では、タクシーに乗車するときに、あやまって「骨折」した場合はどうなるのでしょうか?これは「業務災害」扱いとなります。どうように、特別加入している1人親方=個人での漁船の船長も「通勤」とはみなされず、実情を見て「業務災害」と判断されます。波がゆるやかな内陸湾では、漁船がついている真横に家がある場合もあります。それは、さきほどの個人タクシーのガレージと同じ扱いですね。よってDは×(誤答肢)となります。

Eはその通りですね。同順位者であれば、権利は同じです。これは国民年金法の遺族基礎年金、厚生年金保険法での遺族厚生年金でも全く同じですので、今回で一気に覚えておいて下さいね。よってEは○(今回の〔問 1〕の解答)となります。

結論として今回の〔問 1〕の解答は「E」となります。

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