第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 労働者災害補償保険法〔問 7〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 労働者災害補償保険法〔問 7〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説

労働者災害補償保険法(労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。)

〔問 7〕
労災保険の保険給付及び特別支給金等に関する処分に対する不服申立て及び訴訟等についての次の記述のうち、正しいものはどれか。

A 保険給付に関する不支給決定に不服のある被災者や遺族は、審査請求をした日から1か月を経過しても労働者災害補償保険審査官の決定がないときは、当該審査請求に係る処分について決定を経ないで労働保険審査会に対し再審査請求をすることができる。

B 「事業主が故意又は重大な過失により生じさせた業務災害の原因である事故」について保険給付を行ったときに該当するとして、政府からその保険給付に要した費用に相当する金額の全部又は一部を徴収する処分を受けた事業主は、当該処分に不服がある場合でも異議申立てをすることはできない。

C 保険給付に関する不支給決定に不服のある被災者や遺族が、労働者災害補償保険審査官に対して行う審査請求は、保険給付を受ける権利について時効中断の効力を生じる。

D 特別支給金に関する決定は、保険給付に関する決定があった場合に行われるものであり、当該特別支給金に関する決定に不服がある被災者や遺族は、労働者災害補償保険審査官に審査請求をすることができる。

E 保険給付に関する不支給決定についての審査請求に係る労働者災害補償保険審査官の決定に対して不服のある被災者や遺族は、どのような場合にも、労働保険審査会に対し再審査請求すると同時に、処分の取消しの訴えを提起することができる。

皆様、こんにちは。今回の解説をはじめさせていただきます。

今回は不服申立てや訴訟についてわかっていますか?という問題です。

不服申し立てに関しては、「①保険給付に関する決定に不服のある者は、労働者災害補償保険審査官に対して審査請求をし、その決定に不服のある者は、労働保険審査会に対して再審査請求をすることができる。②前項の審査請求をしている者は、審査請求をした日から3か月を経過しても審査請求についての決定がないときは、当該審査請求に係る処分について、決定を経ないで、労働審査会に対して再審査請求をすることができる。③第1項の震災請求及び第2項の再審査請求は、時効の中断に関しては、これを裁判上の請求とみなす。」という労働者災害補償保険法第38条で、また訴訟については「第38条第1項に規定する処分の取り消しの訴えは、当該処分についての再審査請求に対する労働保険審査会の裁決を経た後でなければ、提起することかてきない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。①再審査請求がされた日から3箇月を経過しても裁決がないとき。②再審査請求についての裁決を経ることにより生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるときその他その裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき。」という労働者災害補償保険法第40条にて、それぞれ規定されています。

とは言っても、「ピンッ」とこないでしょうから、具体的な事例でご説明しましょう。
Aさんは、連日連夜、仕事がハードで残業も多く、出勤のために朝7時に家を出るのに、帰宅は毎日午前1時という暮らしぶりを続けていました。ある日、Aさんは「鬱病(うつびょう)」と診断され、数日後に自宅マンションの屋上から飛び降り自殺をしました。Aさんの遺族には、健康保険法の「埋葬料」として、「5万円」が支給されただけで、労働者災害補償保険法からは、何の支給もありませんでした。残された遺族は「業務上」の過労により、鬱病となり、それが原因で自殺をしたのだから、労災事故である、労働者災害補償保険法での「葬祭料」としての「315,000円+給付基礎日額の30日分」または「給付基礎日額の60日分」のいずれか多い額、あわせて「遺族補償年金」も、もらえるはずである、と最寄りの労働基準監督署を経由して都道府県労働局の「労働者災害補償保険審査官」に対して、「審査請求」をしました。この場合の審査請求とは、「私には葬祭料と遺族補償年金をもらう権利があることを確かめてください。」という趣旨です。そういう「審査請求」をうけて、「労働者災害補償保険審査官」は、今回の場合は、遺族側と事業主側の双方の言い分や証拠、資料などを調べ、時には、労働者災害補償保険審査官自身で調査をして、どらちの言い分がどれだけの割合で正しいかを「決定」するわけです。この場合の決定とは、労働者災害補償保険審査官1人だけの判断のことを意味します。原則として「審査請求」は労働者災害補償保険審査官1人で担当します。数多くある「審査請求」を膨大な資料などを検討して1人で考えて「決定」するのですから、時間がかかります。場愛によっては、「決定」という結果を出すまでに半年や一年が過ぎる場合もあるかもしれません。しかし、それでは、「審査請求」をした人は、たまったものではありません。そこで、「審査請求をした日」から「3箇月」が過ぎても「決定」という結果が出ない場合は、都道府県にある都道府県労働局の労働者災害補償保険審査官の、もう一つ上の機関である「国」の厚生労働省内にある「労働保険審査会」に「再審査請求」することができます。労働保険審査会は厚生労働大臣によって任命された9人の委員で組織されます。再審査請求の結果は「採決」という形で通知されます。労働者災害補償保険審査官1人による「審査請求」の結果は1人が考えた「決定」でしたが、労働保険審査会による再審査請求の結果は、複数名の委員による合議体での多数決での「採決」という結果で決められます。「・・・ここまでの意見や資料により、本事案の採決をとりたいと思います。A案に賛成の方は、・・・・。B案に賛成の方は・・・・。」というような結果が、最終的に通知されます。しかし、この「再審査請求」の結果にも不服がある場合は、裁判所に取り消しの訴えを起こすことができます。しかし、たたでさえ裁判所の判決がでるのは、何年もかかることが多いのに、「猫も杓子も(ねこもしゃくし)」も裁判所に訴えをどんどん起こされてはかないません。ですから、「不服申立て前置主義」が採用されています。これは日本では労働者災害補償保険法の範疇(はんちゅう)である保険給付に関しては、「審査請求」「再審査請求」の結果が出た後でないと裁判所に不服を感じている処分の取消しの訴えを起こしても受け付けませんよ、というものです。これが「不服申し立て」を「前に置く」主義と言われているものです。ただし、例外としてさきほどの労働者災害補償保険法第40条の再審査請求の3箇月経過、著しい損害をさける緊急の必要性の2点の場合は、裁判所に処分の取消しの訴えを提起することが認められています。

という流れを頭に入れた後で、今回の問題文を見てみましょう。

Aの問題文は「1か月」が「3か月」となっていれば良かったですね。よって×(誤答肢)となります。

Bの問題文は「異議申立て」という言葉は「不服申立て」と違い、処分を行った処分庁(お役所のことです)に対して行うものです。そして「徴収」という言葉が労働保険で出てきた場合は、「徴収法」の範囲だと思ってください。また、徴収法には「不服申立て」の規定はありません。ないということは、「不服申立て」はできません。その場合は「異議申立て」といって、その処分をしたお役所に直接「異議申立て」をします。

ここで、あなたは「不服申立て」も「異議申立て」も両方共に「反対意見である」ということですね。この2つはどうちがうのですか?と思うことでしょう。違いをはっきりとわかりやすく示すと

審査請求・・・・・・行政処分を受けた相手方の上級行政庁にします。
異議申し立て・・・・行政処分を受けた相手方にします。

ということになります。

異議申立ては、直接通知をしてきたお役所に文句を言います。
さきほどまでの「不服申立て」は、通知をしてきた労働基準監督署長の1つ上の都道府県労働局(労働者災害補償保険審査官)に文句を言いますね。
このイメージでかなりわかりやすくなると思います。

そして、今回のBの問題文は「徴収」という単語があるので、「異議申立て」ができます。よってBは×(誤答肢)となります。

Cの問題文は「その通り」ですね。考え方としては「審査請求」も「再審査請求」も裁判所に訴える前にやりなさいよ、という「不服申立て前置主義」という日本の法体系のルールで行っているわけですから、裁判を起こしたと同じ効果という「時効の中断」が認められますね。つまり、時効1年で、あと3か月しかないときに「審査請求」を起こしたら、そこから「また1年」の時効がカウントされていきますね。これは何かアクション(行動)を起こした人を、行動を起こさないでほったらかしにしている人よりも保護しようという趣旨ですね。よってCは○(今回の〔問 7〕の解答)となります。

Dの問題文は「特別支給金は保険給付ではない」という労働者災害補償保険法の〔問 2〕の解説をもう一度よく読んでもらえばわかりますね。保険給付ではないので、「審査請求」はできませんね。あくまでも特別支給金は「善意」での上乗せですからね。その証拠に、保険給付の部分は他の法律の保険給付との併給調整がありましたが、特別支給金は、いくら保険給付の部分が他の法律の保険給付との併給調整で減額されたとしても、100%そのまま支給されましたね。よってDは×(誤答肢)となります。

Eの問題文は、「どのような場合にも」というフレーズで「ピクッ」として下さいよ。原則として「採決」が出た後でしたね。特例として「3か月経過、著しく損害大で緊急必要性」の2つだけ、裁判所に取り消しの訴え提起できるのでしたね。よってEは×(誤答肢)となります。

結論として今回の〔問 7〕の解答は「C」となります。

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