第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 労災法関連での労働保険の保険料の徴収等に関する法律〔問 10〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説 労災法関連での労働保険の保険料の徴収等に関する法律〔問 10〕

第42回社会保険労務士試験の択一試験問題解説

労働者災害補償保険法(労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。)

〔問 10〕
労災保険のいわゆるメリット制に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

A メリット収支率の算定に当たっては、特別加入の承認を受けた海外派遣者に係る保険給付及び特別支給金の額は、その算定基礎となる保険給付の額には含まれない。

B 労働保険徴収法第7条の規定により有期事業の一括の適用を受けている建設の事業の場合において、メリット制の適用を受けるためには、当該保険年度の請負金額の総額が1億2000万円以上であることが必要である。

C 労働保険徴収法第20条に規定する有期事業のメリット制の適用により、確定保険料の額を引き上げた場合には、所轄都道府県労働局歳入徴収官は、当該引き上げられた確定保険料の額と当該事業主が既に申告・納付した確定保険料の額との差額を徴収するものとし、通知を発する日から起算して30日を経過した日を納期限と定め、当該納期限、納付すべき当該差額及びその算定の基礎となる事項を事業主に通知しなければならない。

D 労働保険徴収法第20条に規定する有期事業のメリット制の適用により、確定保険料の額を引き下げた場合には、所轄都道府県労働局歳入徴収官は、当該引き下げられた確定保険料の額を事業主に通知するが、この場合、当該事業主が既に申告・納付した確定保険料の額と当該引き下げられた額との差額の還付を受けるためには、当該通知を受けた日の翌日から起算して10日以内に、所轄都道府県労働局資金前渡官吏に労働保険料還付請求書を提出する必要がある。

E 継続事業のメリット制が適用され、所定の数以下の労働者を使用する事業の事業主が、労働保険徴収法第12条の2に規定するメリット制の特例の適用を受けようとする場合は、連続する3保険年度中のいずれかの保険年度において、労働者の安全又は衛生を確保するための所定の措置を講じ、かつ、所定の期間内に当該措置が講じられたことを明らかにすることができる書類を添えて、労災保険率特例適用申告書を提出していることが必要である。

皆様、こんにちは。今回の解説をはじめさせていただきます。

今回は「メリット制」についてわかっていますか?という問題です。「労災保険のメリット制」は、労災保険の保険料は事業の種類が同じであれば、A社とB社では同じはずでする。しかし、A社は毎年、事故を起こしてばかりで、「保険給付」を毎年たくさんしてもらっています。それに対して、B社は事業主自ら、色々と努力をして、労災事故は一件もなく、保険給付もない、優良企業です。しかし努力をして自己をおこさないB社の事業主と毎年事故ばかり起こしているA社の事業主が、いくら業種と規模が同じであっても、保険料がずっと同じなのは「何か不公正な・・・・」と思いますね。ですから、自動車の任意加入保険と同じ考え方をします。事故がおこらないように努力している事業主の保険料はより安く、事故が起こってばかりの事業主からの保険料はより高く徴収することです。こうすることにより、「正直者はバカを見る」ということがないようにしているのです。これが「労災保険のメリット制」となります。

メリット制を適用した具体例をご紹介します。労災保険料が1年間で100万円であるA社があったとします。

A社がとても優良企業で労災事故などは、ほとんど起こさない場合、労災保険料が
A社が建設業の場合は、最大で100万円→60万円まで安くなります。
A社が立木の伐採の事業の場合は、最大で100万円→65万円まで安くなります。
A社がその他の事業の場合は、最大で100万円→55万円まで安くなります。

逆にA社が毎年労災事故をたくさんおこす場合は、労災保険料が
A社が建設業の場合は、最大で100万円→140万円まで高くなります。
A社が立木の伐採の事業の場合は、最大で100万円→135万円まで高くなります。
A社がその他の事業の場合は、最大で100万円→145万円まで高くなります。

結論として
★建設業は最大で40%の範囲内での増減があります。
★立木の伐採の事業は最大で35%の範囲内での増減があります。
★その他の事業は最大で45%の範囲内での増減があります。

私自身、車の任意保険の等級は最高の20等級でかなり割安なのですが、労災保険のメリット制でも、最大の割引率(40%又は35%又は45%)になると、お金をはらう立場になるとうれしいですね。逆にそれだけ割高になると、お金をはらう立場になると、「苦しい」ですね。こういう保険料の増減をつけることを労災保険の「メリット制」といいます。そして、政府は「メリット制」を導入することによって、事業主をはじめとする当事者の労災事故防止をもくろんでいるわけなのです。

メリット制の趣旨はわかりました。メリット制の趣旨は、保険料を安くすると言う「ニンジン」を目の前にぶら下げて、「設備や作業環境、災害防止への努力」などをうながすことによって、災害の発生の度合いをおさえようとするものなのですね。

では、「メリット制」によって労災保険料を安くしてももらうためにはどうしたら良いのでしょうか。

それは、3年間平均の収支率が100分の75以下であれば、良いのです。

ちょっと待ってください。100分の75以下というのは事故率か何かが低ければ良いのではないかという想像が出来ます。

しかし、「収支率」とは何ですか?わかりやすく説明してください。

「収支率」とは、業務災害に関して政府からいくらのお金をもらっているかをあらわします。つまり事業主が政府に対して払った額に対して政府からいくらお金をもらっているかの割合となります。仮に100万円払って80万円もらっていたら、収支率は100分の80となり、100分の85を超えてもいないし、100分の75以下でもないので、メリット制の適用はありません。つまり労災保険料は増えも減りもしません。では、社会保険労務士試験の本試験で具体的に収支率を計算しなさいという問題が出題されたら、あなたはどうしますか?というよりも、試験会場で収支率を計算させるような問題が出たとしたら超難問になりますので、全国模試でベスト10に入るような人でも、なかなか解けないのではないかと予想します。私自身、正答を導き出す自信はありません。しかし、「収支率」の意味を理解するために役立つので私の話をもうすこし聞いてみてください。

まず、事業主が「業務上の労災事故」のために払うお金は、労働者災害補償保険料(省略して「労災保険料」と言います。)ですね。あと、事業主自身が中小事業主で、労働者と同じような形態の仕事もするので、申請して特別加入が認められた場合には、「第1種特別加入保険料」を事業主本人の分もはらいますね。ですから、労災事故用に事業主が払うのは、①労災保険料の額、②第1種特別加入保険料の額、の2種類ですね。これが事業主が政府に対して払う保険料となります。それに対して、いざ、労災事故が起こったときに政府からもらうお金などは、保険給付という名称で、いろいろともらいますね。そして、「特別支給金」というお金ももらいますね。たとえば、休業補償給付=給付基礎日額の60%のお金を舞に津もらうのですが、ぷらすアルファとして、休業特別支給金=給付基礎日額の20%、のお金も政府からもらえましたね。ですから、政府から労災事故に関してもらうお金は③保険給付の額、と④特別支給金の額、という2つになります。これで「支給率」の計算について、分母と分子がでてきますね。確認します。支給率は「政府に払ったお金」に対して「政府からもらったお金」がどれくらいの割合かをあらわす数字となります。

今まで出てきた①②③④を使って式を組み立てると

③保険給付の額+④特別支給金の額
—————————————-
①労災保険料の額+②第1種特別加入保険料の額

が支給率?の基礎となる式ですね。最後に「調整率」というものをかけます。
調整率とは、やはり業種によって、労災事故が起こりやすい業種と起こりにくい業種があるので、その違いを「支給率」に反映させようと言う数字のことになります。あなたや私が個人で入ることがある生命保険でも、同じ給付をうけるのでも、「年齢リスク」といって、20歳の人、40歳の人、60歳の人が今から個人で保険契約をするならば、年齢があがるにつれて、保険料が高くなっていきますね。この20歳40歳60歳の例では、60歳の人の保険料が1番高くなるはずです。それは、60歳の人が万が一の病気や怪我などの状態になる可能性が1番高いので、あらかじめ払う保険料も高く設定されているのです。同じ考え方で、労災保険料も「林業」「建設業」「港湾貨物取扱事業又は港湾荷役業」「上記以外の事業」の4種類の順に高く設定されています。これはこの順に労災事故が起こるリスクが高いと今までの統計で出ている、つまり過去の事故率などの統計からこのような設定とされているのです。

ですから、先ほどの式にこれらの「調整率」をいれると

③保険給付の額+④特別支給金の額
——————————————————
(①労災保険料の額+②第1種特別加入保険料の額)×第1種調整率

この第1種調整率という数字は
(1)林業の事業★100分の51
(2)建設の事業★100分の63
(3)港湾貨物取扱事業又は港湾荷役業の事業★100分の63
(4)上記以外の事業★100分の67

という4種類となっています。

あなたは「第1」という数字があるならば、「第2」という数字もあるはずだろう。それは、どのような意味を持ち、どのように違うのだろう?と思うかもしれませんね。

今ご紹介した「第1種調整率」は、継続事業の場合と、有期事業で「事業が開始された日より事業が終了した日から3箇月を経過した日前」の場合に使う数字です。あなたは「継続事業はいいとして、有期事業の3箇月を経過した日前、とはなんのことだろう」と思うかもしれませんね。有期事業のメリット制には「事業が開始された日より事業が終了した日から3箇月を経過した日前」又は「事業が開始された日より事業が終了した日から9箇月を経過した日前」の2種類があります。この2種類目が「第2種調整率」として、
(1)建設の事業★100分の50
(2)立木の伐採の事業★100分の43
とされています。
実は「第2種調整率」とは、事業が終了した日から3箇月がたっても、まだ保険給付の支払いの見込みもたっていないような大事故(死亡事故など)についての調整率となります。普通の考えたら、労災事故という物は、業務上ですから、事業が終わったら、保険給付が発生する事故もなくなりますね。事業が終わっても、保険給付があるというのは、怪我や病気をして通院中、治療中というパターンが考えられますね。しかし、軽い病気や怪我ならば、事業が終了して3箇月もすれば、完治(治癒)するのがよくあるパターンですね。完治(治癒)すれば、保険給付や特別支給金の支給も確定していますから、「支給率」の計算もできますね。しかし、事業が終了して3箇月経っても、保険給付が終了しないというのは、かなり通院や治療が長引いているケースですね。そういう場合は最長でも、事業が終了した時から9箇月たった時点での保険給付や特別支給金の額をもとに「支給率」を計算します。そして、そういうケースが多いのが「建設業」「立木の伐採の事業」の2種類なのでする実は、昭和61年までは第1種調整率しかなかったのですが、あまりにも「建設業」「立木の伐採の事業」に関しては、「事業終了後3箇月経過しても、まだ支給率が計算できない」状態が多いことを考慮して、昭和61年の法改正で「第2種調節率」があらたに設置されたのです。国会も今はヤジ合戦のようになっていますが、こういうところで、きちんとしていた時代もあったのですね。

よって調整率を「第1」「第2」とわけないならば、さきほどの収支率の式は

☆☆☆☆☆ ③保険給付の額+④特別支給金の額
☆収支率=——————————————
☆☆☆☆☆(①労災保険料額+第1種特別加入保険料額)×調整率

となります。

ここまでで「支給率」については、わかりましたね。この支給率が100分の85を超えると、保険料が高くなり、100分の75以下であると、保険料が安くなるのですね。
でも、もともと払う保険料があまり多くない会社、言い換えると、あまり保険給付を必要としない会社についてはメリット制を導入しても、「一年間で50円位し変わらないなら、別にわざわざ時間とお金をかけた事務処理をして導入しなくても良いか」となります。ですから、メリット制の利点を感じることが出来るとされる基準として継続事業では
(1)100人以上の労働者を使用する事業
(2)20人以上100人未満の労働者を使用する事業であって、災害度係数が0.4以上であるもの。
(3)有期事業の一括の適用を受けている建設の事業又は立木の伐採の事業であって、当該保険年度の確定保険料の額が100万円以上の事業
となっています。また、有期事業では建設の事業又は立木の伐採の事業であって、その規模が次の各号のいずれかに該当するものとする。
(1)確定保険料の額が100万円以上であること。
(2)建設の事業にあっては請負金額が1億2,000万円以上、立木の伐採の事業にあっては素材の生産量が1,000立法メートル以上であること。
とあります。
はっきり言って、有期事業の「建設業」「立木の伐採の事業」に関しては、政府は、保険給付の多さに困って「保険料をあげると牽制して、労災事故を抑制する」気持ちをありありと感じるなぁ、と思うのは私だけでしょうか。

以上のことをイメージしながら、今回の問題文を読んでみましょう。

Aの問題文は「・・・海外派遣者・・・含まれない」とありますね。メリット制には特別加入は「第1種」の中小事業主等だけでしたね。よってAは○(正答肢)となります。

Bの問題文は「一括の適用を受けている・・・1億2,000万円以上・・」とありますが、一括の適用をうけていない場合に1億2,000円以上でしたね。よってBは×(今回の〔問 10〕の解答)となります。

Cの問題文は、私が〔問 9〕のBの解説文で「認定決定の通知は15日以内でそれ以外は30日以内」という覚え方をご紹介したように30日以内となっていますので○(正答肢)となります。

Dの問題文は、「有期事業のメリット制の適用により確定保険料の額が引き下げられた場合で事業主の請求があった場合には、その引き下げられた確定保険料の額との差額が還付される。なお、差額の還付請求は、引き下げられた労働保険料の額の通知を受けた日の翌日から起算して10日以内に行わなければならない。当該差額の還付請求書の提出先は、確定精算における超過額の還付請求の場合と同様である。すなわち、当該差額の還付請求は、労働保険料還付請求書を、所轄都道府県労働局資金前渡官吏に提出する(ただし、この場合は、労災関係申告・納付手続に係る還付請求書となるので、所轄労働基準監督署長を経由して所轄都道府県労働局資金前渡官吏に提出する)ことによって行わなければならない」という、労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則第36条1項について問いかけてきている問題です。Dの問題文は「まさにその通り」となりますので、○(正答肢)となります。とにかく「労働保険の還付は10日以内」、とイメージしておいてください。

Eの問題文は、継続事業のメリット制が適用された場合には、40%の範囲内で保険料が増減するのですが、「メリット制の特例」として、40%保険料が安くなるのを45%間で範囲を広げて安くしてあげましょう、というものです。条件は次の3つです。
(1)中小事業主であること。
(2)連続する3保険年度中のいずれかの保険年度において、労働者の安全又は衛生を確保するための措置を講じたこと。
(3)当該措置が講じられた保険年度のいずれかの保険年度の次の保険年度の初日から6箇月以内に労災保険率特例適用適用申告書を提出していること。
考え方として、継続事業のメリット制は実際に労災事故が少ない場合は、最大40%の保険料の割引がありますが、それに加えて目に見える形で中小事業主が安全衛生教育や安全衛生訓練などを実施して、その報告を次の年の4月~9月までの間に政府に届け出たら、45%まで保険料を割引してあげましょう、という流れを頭の中に何回かイメージしたら覚えることができると思います。

Eの問題文は「まさにその通り」ですので○(正答肢)となります。

結論として今回の〔問 10〕の解答は「B 」となります。

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